騎士物語 外伝

 

 

 

 

 

 

  

 最近、カノンの様子がおかしい。

何かと口実を設けては、頻繁に、奥御殿に出入りする。

 

 カノンは、かなわぬ恋をしていた。相手は、王弟妃殿下の首席侍女・コルド伯爵夫人だった。

カノンより5歳年上の美しい貴婦人は、聡明で慎み深く、宮中のしきたりと礼法に通じ、妃殿下の信任厚い首席侍女だった。

王子のお相手として、何度も奥御殿に出入りするうちに、カノンはこの貴婦人と知り合い、一目惚れした。だが出会ったとき、彼女はすでに、人妻だった。

どんなに恋いこがれても、手の届かぬ高嶺の花に、若いカノンの恋心は、募る一方だった。

かつての自分と同じ悩みを抱えている弟を、ヘミオラは、見て見ぬふりをしながらも、弟が無茶をしないよう、さりげなく心を配っていた。

 

だが、どれほどヘミオラが配慮しても、多忙な近衛隊長は、常に、弟だけを見ているわけにはいかない。

ある夜、ヘミオラが、近衛隊の重臣たちとの軍議に出席している最中に、事件は起きた。

 

 

 

奥御殿の王弟殿下一家の住居に、刺客が忍び込んだ。近衛隊と王宮警備隊が、ただちに出動し、殿下一家にも、お付きの者たちにも、被害はなかった。

カノンは、逃げた刺客を一人で追った。なんとしても捕らえて、尋問してやる。気丈に妃殿下を庇いながらも、震えていたコルド伯夫人の姿が、脳裏に焼き付いて離れない。

 

俊足のカノンに、追いつかれそうになった賊は、振り向きざま、カノンに向けて発砲した。

左腕に、灼けるような痛みを覚えながら、カノンは自らも拳銃を抜き、脚を狙って、引き金を引いた。相手が崩れ落ちたのを見届けて、カノンはその場に、倒れ込んだ。

追いついた同僚に抱えられながら、カノンは、必死で叫んだ。

 

「賊を捕らえろ。必ず、生け捕りにしろ」

カノンの発砲は、見事に急所を外していた。だが刺客は、舌をかみ切って死んでいた。必死の探索にもかかわらず、犯人の身元は割れなかった。

首謀者は、はじめからそういう人間を、雇ったのだろう。

 

 幸い、刺客が放った弾丸は、カノンの左の上腕をかすっただけだったが、大怪我であることに違いはない。

大量に出血し、高熱を出し、カノンは、宮殿内のヘミオラの私室で、三日三晩、生死の境を彷徨った。

 

 

 

三日目の夜中に、ようやく意識を回復したカノンが最初に見たものは、青ざめてやつれ果てた、兄の顔だった。

「・・・にい・・さ・・」

「しゃべるな」

兄は、首の下に腕を入れて頭をあげさせ、薬を飲ませてくれた。カノンは再び、深い眠りに落ちた。

 

 

翌朝、目覚めたカノンの額に、ヘミオラは手を当てた。熱はだいぶ下がったが、弟の瞳にはまだ、生気が宿っていない。カノンは、じっと兄を見上げた。

勝手に持ち場を離れ、禁じられている単独行動を、また取ってしまった。

「怒っている?」

「当たり前だ・・・傷が治ったら、たっぷりお仕置きをしてやる。覚悟しておけ」

「・・・はい」

カノンは、ぐったりと枕に顔を埋めた。

 

 全快するまでの10日間、兄は労ってはくれたが、仕事最優先で、ろくに看病もしてくれなかった。

しかし、ヘミオラの命を受けて、カノンの看病にあたった兄の副官は、カノンが意識不明だった3日間、ヘミオラが不眠不休で看病したことを、そっと耳打ちした。

「あれほど取り乱した、隊長のお姿を拝見したのは、初めてです」

ヘミオラは、医師に向かって

「このまま弟を死なせたら、そなたの命も無いものと思え」と、凄んだそうだ。

 

ヘミオラが、こういう屈折した愛情表現を示すのは、カノンに対してだけだ。

意識を回復したあと、わざと冷たく接したのは、取り乱して醜態をさらした副官に、威厳を取り繕いたかったのかもしれない。

 

 

兄の、一見理不尽とも取れる仕打ちが、自分への信頼の証なのだということを、最近のカノンは、理解できるようになった。

肉親の情に溺れて、弟を甘やかしているという誹りをしりぞけるために、職場での兄は、必要以上によそよそしく、厳しい。

その兄が、なりふりかまわず、3日間、不眠不休で看病してくれた。カノンには、それだけで十分だった。

 

 

明日から勤務に復帰するという前夜、カノンは恐る恐る、兄に切り出した。

「兄さま」

「なんだ?」

「ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」

「心配などしておらぬ。そなたの無茶を一々案じていたら、命がいくつあっても足らぬ」

 

「お仕置きは?」

ヘミオラは、ベッドに横たわっているカノンに覆い被さり、顎を掴みながら

「こんな大怪我をして、生死の境を彷徨うほど苦しんだ。罰は、十分受けたであろう」と言った。

「この怪我は、自業自得です。命令に背き、勝手に持ち場を離れた罰を、お与え下さい」

「たった一人で刺客を追いつめた、勇敢な英雄を処罰することは、まかりならぬとの、殿下の仰せだ」

「兄さまは、殿下どころか、陛下のお達しがあっても、私に、お仕置きをなさったではありませんか」

「まだ、恨んでいるのか?」

「恨んでなど、いません」

「嘘をつけ。イヤだ、放せ、兄さまなんか大嫌いと、さんざん、悪態をついたくせに」

「恨んでいるとすれば、それは兄さまではなく、お仕置きの厳しさです」

 

ヘミオラは、思わず微笑んだ。カノンを抱き寄せ

「病み上がりのそなたを、これ以上苦しめることなど、私には出来ぬ」と告げた。

カノンは、兄の腕の中で、ほっと安堵の息をついた。傷が治ったことと、兄が許してくれたことの両方で、身体中の緊張が一挙にほぐれた。

仕事を離れて二人きりになると、カノンはたちまち甘ったれの弟に戻り、ヘミオラは大甘の兄になる。

 

 

久々に水入らずの時間を過ごす兄は、さんざん心配させた挙げ句に、すっかり元気を取り戻し、安心しきって甘えてくる弟を、少しだけ懲らしめてやりたくなった。

「そなた。コルド伯夫人に、惚れていたのであろう」

「っっ、なっ、違います!!!」

いきなりの不意打ちに、カノンは狼狽した。

今や、近衛隊長を凌ぐ宮中一の遣い手との名声を、欲しいままにしている天才剣士も、百戦錬磨の兄にかかっては、赤子同然だった。

 

「愛する人を怯えさせた刺客が、許せなかった。だから、あんな無茶をしたのであろう」

「違いますったら!!そんなのじゃありません」

「そんなのじゃないなら、どんなのだ?」

「・・・」

 

 

ヘミオラは思わず、苦笑を漏らした。

最近のカノンの成長ぶりはめざましく、ヘミオラから見ても、頼もしい騎士ぶりだが、おくての弟は、貴公子としてはまだまだ、可愛い童子の域を出ない。

 

かなわぬ恋に身を焦がし、愛する人を守るためなら、危険も顧みない。

兄にすべてを見透かされているとも知らず、一人密かに、恋心を抱いていたのであろうカノンが、いじらしいやら、可愛いやらで、ヘミオラは、弟のプライドを傷つけないよう、必死で笑いを噛み殺した。

 

「私はただ、あの方を、尊敬しているだけです。あんなに、聡明で、博識な貴婦人に、出会ったのは、初めてです。

 ・・・お話を、していると、時間が、あっという間に過ぎるほど、楽しくて、だから、だから・・・王子のお相手を、したついでに、時々、お目にかかるだけで・・・」

カノンは、しどろもどろだった。どんな相手の前でも、息一つ乱さず剣を振るう、宮中一の遣い手と、同一人物とは思えない。

 

  

凛々しい王宮武官としての、日頃の姿からかけ離れた弟の慌てぶりに、ヘミオラはとうとう、堪えきれなくなった。

「カノン」

「なんです?」

「世間では、それを、恋と申すのだ」

そう言って、声を上げて笑う兄に、カノンはのしかかろうとしたが、逆に組み伏せられた。

「違います」

「違わない」

 

くれっ面をして顔を背けたカノンの頬を、指先で突きながら、ヘミオラは

「そなたは、まだ若い。これからいくらでも、恋は出来る」と慰めてやった。

「私のことより」

カノンは、話題を逸らした。これ以上やりあっても、剣でも恋でも、百戦錬磨の兄には、適わない。逃げるが勝ちだ。

 

「兄さまこそ、早く奥方をお迎えになって、跡継ぎを設けて頂かねば、公爵家が途絶えます」

「生意気を言うなら、お仕置きをするぞ」

「イヤだ」

ヘミオラは、逃げようとするカノンをうつ伏せにすると、布団の上から、1発だけお尻をぶった。

 

「兄さま」

「なんだ?」

「兄さまは、今まで誰かに、恋したことはなかったのですか?」

「なかったわけでは、ないがな」

ヘミオラはそう言って、肘をついて横向きになり、カノンの顔を覗き込んだ。

「父上亡き後、20歳で跡を継いでからずっと、公爵家を護るのに必死だったからな。それに」

ちらりと、カノンを見て

「我が家には、世話の焼けるやんちゃな甘えん坊が、一人いたのでな」と言った。

 

カノンは、ぷいと兄から顔を背け

「その困った甘ったれも、もうじき20歳。大人になります」と言った。

「なろうと思ってなれれば、誰も苦労はせぬわ」

「本当に、大人になります」

「無理をせずともよい」

「いいえ」

カノンは兄のほうに向き直って、その瞳を正面から見据えた。

 

「20歳で父上の跡を継いだ兄さまには、及ぶべくもないけれど、せめて兄さまが、安心して奥方を迎えられるぐらいの大人には、なってみせます」

「ほお、それはありがたいな」

「兄さまっ」

茶化してばかりの兄に、カノンは拗ねた。

 

ヘミオラは、にやりと笑い

「では、お言葉に甘えてこれからは、未来の妻との出会いを求めて、せいぜい、夜会の招待に応じることとしよう。留守を頼むぞ」と言った。

「お一人で、いらっしゃるの?」

「二人揃って、夜な夜な、屋敷を空けるわけにいくまい。何かあったら、誰が母上を守るのだ?」

カノンは、ふくれっ面をして拗ねた。仕事を離れたときぐらい、兄のそばにいたい。

 

「カノン」

返事もせずに、顔を背けた弟の顎に手を掛け、ヘミオラは強引に、自分に向き合わせた。

「明日、勤務が明けたら、そろって屋敷に戻ろう」

「兄さま?」

「そなたの具合を、母上が案じておられる。元気になったそなたを連れ帰り、大事な息子を負傷させたお詫びを、申し上げねばならない」

「悪いのは、私です」

「部下の監督不行届は、隊長の咎だ」

「勝手に持ち場を離れたのは、私です。兄さまに、罪はありません」

「部下の罪は、隊長の責任。軍隊とは、そういうものだ」

 

カノンは、じっとヘミオラを見つめた。兄はいかなるときも、己に厳しく、他者に寛容だ。繊細で優しい内面を、凛々しさの鎧で包み、なんでも一人で抱え込む。

足下にも及ばないが、せめて兄の力になりたい。もう二度と、心配を掛けるようなことはするまい。

家を護るために、青春を犠牲にしてきた兄に、これからは、自分のことだけを考えてもらいたい。大人になる。カノンは、固く決意した。

 

「ところで兄さま、刺客の身元は、割れましたか?」

「いや」

「奴はどうやって、警備の厳しい奥御殿へ、入り込んだのですか?」

「厨房に出入りする、食材運搬人に紛れ込んで、宮殿へ侵入したようだ」

 

カノンは、怪訝な表情をした。宮殿への出入りは、厳重にチェックされる。御用達商人は、代々受け継いだ鑑札がなくては、表門すら通れない。

運搬人の中に紛れ込むなど、不可能だ。ヘミオラは、カノンの不審を察し、頷いた。

 

「黒幕は、奥御殿内にいる、ということだ」

「まさか!」

奥御殿内ということは、王弟殿下一家を亡き者にしようと企んだ人間は、同じ王族内にいるということか?

「今朝、陛下から正式に、捜査打ち切りのご下命がくだった」

「なんですって?」

「真相は、永久に闇に葬られる」

 

「陛下は、間違っておられます」

「声が高い!」

ヘミオラは、カノンの口を掌でふさいだ。

「首謀者を暴くことは、王家の内紛を表沙汰にすることになる。陛下は、そのようなことは、お望みではない」

 

 

 

国王には、3人の弟がいる。末弟殿下は、ただ一人の妾腹の王子で、王座を狙う兄たちと違って、一途に国王を慕い、その身を案じている。

だから、歯に衣着せぬ進言もするし、王族はもっと己を律するべきだと主張し、一族に疎んじられている。

 

700年の惰眠をむさぼり、驕りと虚飾にまみれた、豪奢な王侯貴族の退廃に、どっぷり浸っている王家の中で、正しく世の趨勢が見える聡明な末弟は、邪魔な存在でしかない。

 

「実の弟たちにすら、お心を許せぬとは、陛下もお気の毒な方だ」

ヘミオラは、ため息混じりにそう言った。

「私は、幸せ者だな」

「兄さま?」

「どんなに厳しく叱っても、どれほどきついお仕置きをしても、私を慕ってくれる、可愛い弟に恵まれて」

 

「兄さま。お心に決めた方が現れたら、ご結婚の前に、私にだけは、ご紹介ください」

「なにゆえだ?」

「兄さまにふさわしい方かどうか、私が、見極めてさしあげます」

「何を生意気な」

「兄さま!」

「結婚相手ぐらい、自分で決める」

「ダメです。兄さまは、誰にでも優しいから。公爵家の財産目当ての、性悪女にでもひっかかったら、どうなさるのです?」

 

ヘミオラは、爆笑した。

「そなたのような、口うるさい厄介な弟がいては、私には嫁の来てはないな」

真剣に心配しているのに、茶化されて、カノンは拗ねた。

「もう寝ろ。明日は、早いぞ」

ヘミオラはそう言って、カノンを傍らに横たえようとしたが、弟は胸元に縋りついて、離れようとしない。

「大人になるのでは、なかったのか?」

「なります。明日から」

ヘミオラは、思わず吹き出し、弟を抱き寄せてやった。

 

  

 

ヘミオラは、自分が最後に父に甘えたときのことを、思い出した。ちょうど今のカノンと、同じぐらいの年だった。

胸元に縋りついた自分を、父は抱きしめてくれ、掌で頬を包み、指先で涙を拭ってくれた。そして「良い子だ」と言ってくれた。

あの言葉が、その後の自分を支え続けた。

20歳で父を失った自分は、その後誰にも甘えられなかった。だが、カノンには自分がいる。

いくつになっても自分は、カノンにとって、頼り、縋り、甘えられる存在で居続けようと、ヘミオラは思った。

 

 

 

 

その後カノンは、二度と兄のお仕置きも、隊長の罰も、受けることはなかった。凛々しい若武者に成長したカノンは、ヘミオラの懐刀として、常に兄を助け、兄に仕えた。

やんちゃで甘ったれな性格が、終生変わらなかったのは、弟にそれを許し続けた兄にも、責任がある。

お互いに、初恋の人が忘れられなかった二人は、生涯妻を娶ることなく、日に日に権威を失墜していく国王に仕え、破滅へとひた走る王家を護り続け、共に闘い、王家と時代に殉じた。

 

  

啓蒙思想の浸透と、不安定な国情に比例するように、貴族階級は、徐々に、平民たちの憎悪の的となっていった。

国境の小さな村で起きた領主への反乱は、国中に飛び火し、鎮圧とさらなる蜂起を繰り返しながら、そのたびに大きく、凶暴に膨れあがり、ついに、革命の炎を産んだ。

 

  

凄惨な貴族狩りが、国中で繰り広げられた。しかし、ヘミオラとカノンは、公爵領の領民たちから、愛され続けた。

革命軍が王宮を襲ったあと、地主は領民たちを率いて、カノンの亡骸と、ヘミオラの首級を、密かに奪い返し、コンツェルティーノ家の墓所に、手厚く葬った。 

革命の敵である、貴族を敬うような真似は、革命に対する裏切りである。領民たちは命がけで、別々に散った最後の領主兄弟を、墓所の中で再会させた。

 

  

 

 

 

革命から30年後のある日、一組の親子が、コンツェルティーノ公爵家の墓所を、訪れた。 

父の後を継いで、公爵家の墓を守り続けていた、元地主のトニカは、その立ち居振る舞いから、親子が、高貴な身分の出自だと見抜いた。

「もしや、コンツェルティーノ公爵家に、ゆかりの方々ですか?」

 

親子は、一瞬表情を硬くした。

王制が廃止され、身分制度もなくなり、国中を吹き荒れた貴族狩りの狂気の嵐も、今では法で禁止されているが、それでも、貴族の残党狩りは、時折、起きている。

 

  

父親とおぼしき男は、覚悟を決めたように、かすかに微笑み

「いかにも、我らは元貴族だ。なぶり殺すなら、そうなさるがよい」と応えた。トニカは

「この国にもはや、貴族はおりません。今の我が国にいるのは、祖国を愛する、平等な市民だけです」と応えた。

 

「ここには、私にとって、最後の貴族だった方々が、眠っておられます。ヘミオラ・コンツェルティーノ公爵とその弟、カノン・コンツェルティーノさま。

 お二方とも、最後まで領民から愛され続けた、名君であらせられました」

「ヘミオラとカノンは、ここにいるのか?」

「はい。我が父が、カノンさまの亡骸を、宮殿からここへ運びました。残念ながら、ヘミオラさまは、御首しか、奪い返すことができませんでしたが」

 

断頭台の露と消えたヘミオラの首は、王宮広場に晒され、首から下の亡骸は、革命軍によって無惨に切り裂かれ、うち捨てられた。

 

「どうか、この墓所をいつまでも、守ってやってくれ」

親子は、トニカに深々と、頭を下げた。

 

「父上。ヘミオラとカノンの亡骸が、暴徒どもの手から守られていて、ようございました」

「うむ」

親子はそろって、涙ぐんだ。

 

最後の貴族。最後の騎士。最後の領主。

美貌の貴公子兄弟は、なにひとつ残さず、王家と共に散ったが、どんな権力をもってしても消すことの出来ない、とてつもない遺産を、残して逝った。

永遠に人々に語り継がれる、伝説という、神に愛された英雄だけに許された、遺産を。

 

 

 

「殿下」「王子」

親子は、同時に立ち止まった。父はヘミオラが、息子はカノンが、自分を呼ぶ声を、はっきりと聞いた。

「殿下。よくぞ、ご無事で」

「王子。ご立派になられましたな」

 

  

親子は、確信した。

二人は今、一緒にいる。そして、もう二度と、離れないであろうと。 

 

    

 

  

 

 

 

 

 

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