【 目撃 】

 

「半年以内に妖力値100000P以上の者を、6名連れてくる」


黄泉に協力する上で必要なのは、力だった。

雷禅、躯、そして黄泉。
現在の魔界では、この3つの勢力でなりたっている。
しかし、今、雷禅が衰え、死に向かってきている。
半年から1年の間に、確実に魔界は三つ巴の均衡が破れ、大混乱に陥る。

その際に、覇者となろうと黄泉が動き出した。

もちろん、躯側も、だが。

躯は強い。
雷禅側に幽助がいるが、その彼をもってでも躯を破るのは難しいだろう。
そして躯側には―…飛影がいる。
彼も…強くなった。

「俺が欲しいのは勝利だけだ。」

黄泉が言った言葉に、蔵馬は頷いた。

 

「各国のNO.2が国王の右腕にすらなれていない」という事実は懸念するものがあった。
妖力値全体が、国王に比べて格段に低いのだ。
組織同士の勝敗は副将が握る。
これは歴史上でも自明の理。

最低でも、5名以上100000P(ポイント)あるものをそろえておきたい。
これで勝敗は決したようなもの。

しかし、言うほどに容易いことではない。


「できるのか?」

会議場で問われたことに、「無論」。
冷笑で持って答えた蔵馬は、すぐさま動いた。
暗黒武術大会で、戦ったことのある―…力が伸びそうな者たち6名に連絡をとった。


ある者は拒み、ある者は嫌がったが…説得ならお手の物。
どんな説得をしたのかは、想像にお任せするが(えげつない手段もとったと思われ略)。

結果
酎 鈴木 死々若丸 凍矢 陣 鈴駒

声を掛けたすべての者が集結した。

 

 


修行場所は、玄海の私有地の一角に結界を張ったところにした。

指導者も玄海。
コエンマも様子を見に訪れる。

そして蔵馬自身は監督者。
自身も修行する傍ら、時々現れて特訓のアドバイスをする。


初めて3日しか経っていないのに、みるみるうちに力を上げていく姿に、玄海はもちろんコエンマも驚いていた。
様子を見に現れた蔵馬に


「よお、蔵馬!」

汗だくとなった酎が気づいて、笑顔を見せる。

「ここの修行はハンパねーな…!」

「だが、その分力がつく。」

凍矢が自分の体内に宿る妖気を感じながら満足げに、言った。
たった3日で飛躍的に妖力がアップしているのである。

「枯れかけた夢を咲かせてもらったこの鈴木、働きをもって恩返しさせていただく」

「ケッ」

希望に燃える鈴木のとなりで、死々若丸が毒づいた。
鈴駒が「まぁまぁ」ととりなし、それも面白くない死々若丸が一層不機嫌そうな顔をした。
そんな顔を見渡しながら、微笑み、蔵馬は言った。

「みんな、この調子で頑張ってもらいたい。まだまだこれからだからな」

「おっしゃぁ!!」

「幽助も強くなってるんだろな。早くもいっぺん戦いてぇな」

陣の言葉に皆の顔がひきしまった。
そうだ。
まだ始まったばかり。
すべては半年後。

はりきって、皆、修行を再開した。

 

*****

それから2日過ぎたころか、事件は起きた。

修行をすれば汗をかく。
地に叩きつけられれば、泥だらけとなる。
ほっとけば垢まみれw

汚れが最大限になったとき、耐えきれなくなった者から湯を使うのだが…
(狭いが風呂場はある)


蔵馬と死々若丸がはちあわせをしたのである。
蔵馬はちょうど着替えている時で、死々若丸はこれから入ろうとするところである。

ただそれだけなら問題はない。

友達同士ということもないのだから、声をかけることもなく見て見ぬふりをして終わりである。

が、死々若丸は見た。


蔵馬の尻の部分に目立った痕があることを。

「…」

男にしてはなめらかな白い肌をして、他に外傷もない。
だが、尻の部分だけが黒いような黄色いような…まだらに変色した痣に覆われているので、とにかく目立つのだ。
修行でつくような部位とも思えないので、違和感を感じ、思わず凝視した。

その視線に気づき、蔵馬は内心、しまったと舌打ちをした。
素早く道着を着るが、確かに見られてしまった。

尻についた部分は、黄泉にヤられた痕である。
一週間たち、青黒く染まったのが黄色くなってきて…治ってきてはいるが…
跡形もなくなるまでにはもう少し経つだろう。

――あの馬鹿力め!

力だけじゃなく、千年もの執念、すさまじいほどの想い。
そんなものをまともに浴びたからか、治りが遅い。

痛みもまだうっすらと残っている。


まぁ、それはいい。
数日後には消える。
が、見られたのは不覚といってもいいだろう。
己の馬鹿さ加減にも嘆息しながら、さりげなく蔵馬は言った。


「これか?――黄泉にやられたんだ」

少し皮肉気な笑みを浮かべて様子を窺う。

「!!」

思ったとおり、その事実に死々若丸は驚いたようだ。
だが、すぐその表情を消し、かわりに揶揄するような顔になる。

「フン、天下の妖狐蔵馬も黄泉の犬になりさがったか。情けないやつだ」

言った途端に、脱衣場の空気が変わる。
ぞくっとしたような冷気が切りつけ、思わず死々若丸は身構えた。

「!」

身構える一瞬で蔵馬が、目の前までに移動していた。
慌てて飛び下がったが、遅い。
ぐっと髪の毛を捕まえられ、そのまま床に叩きつけられる。

肩を強くつかまれ、顔が近づく。

いともたやすく組み伏せられたことに驚きを感じながら、それよりも至近距離で煌めく蔵馬の眼にぞっとした。

「黙れ」

言う口調も、冷ややか極まりない。
危険にゆらめく瞳は、先ほどまでの蔵馬ではない。
伝説の妖狐…!
先ほどの侮辱にはっきりと、怒りをこめて反応している。


妖力値の差もはっきりと感じた。


――今のままでは、勝てない。

それが瞬間的にわかる。
死々若丸は悔しかった。
幻海に負けてからというもの、自分なりに修行をつんだつもりだし、ここ数日で確かにレベルが上がったのに。

――ケタ違いだ。

「どうするつもりだ?」

にらみつけて問うと、蔵馬はにぃっと笑った。

「お前にも同じことをしてやるよ」

「断る!」

同じことが何なのか、瞬間的にはわからなかったが、あのような傷をつけられてたまるか!
全身の力をこめて押しのけ、殴りつける!

が、外れた。

しばらくはお互いに間合いをとろうと、気配を探り合っては動いた。
だが、妖力値が違う。
次第に追い詰められ死々若丸は、冷や汗をかいた。

――殺される!

相手が、観念したのを察してか、ゆっくりと近づきながら蔵馬は笑った。


「さぁて、お仕置きの時間だ」


「・・・・・・!」

 

そこから先は、死々若丸にとっては信じられないものだったかもしれない。
見えない力で封じ込められたような。
下手に動けば殺される。危機感を抱いたまま、身体が動かない。


そして抵抗のない自分が、脱衣場の棚代わりの机に押しあてられた。

身体がくの字になり、自然と尻が突き出された。
背中と共に後ろに回された手さえも押さえつけられてしまう。
袴が脱がされ、下半身があらわになった。


「なっ」

あまりの羞恥に、抵抗しようとしたとたん、鋭い痛みが走った。
ビシィと乾いた音が爆ぜる。

「ぅあ」

「どんな気持ちか。たっぷりと味わえ。」

バシッ
ビシィ!
バチィ!!

尻に食らいついてくる平手の衝撃にただ驚くばかりだ。
痛い。
当たり前だが痛覚はある。
ひりつくような、焼けつくような表面の痛みと、時折来る重い中まで響くような鈍い痛みに翻弄されていく。


蔵馬としても容赦をするつもりはない。
徹底的に痛めつける。
自分にやられた屈辱を倍に。

――かわいそうに。

目を細めて、押さえつけられている相手を見下ろす。
尻があっというまに赤く染まっていく。

――見られたのが死々若丸で良かった…

挑発に面白いくらいにノってくれたのだから。

これで、彼は言えない。
プライドにかけても。
だから、正直に言った。
死々若丸が嘲笑してくることを見込んでの告白だった。
嘲笑には罰を…。
想像通り…


冷静にそんなことを考えながら、振り上げた手を素早く打ちおろしていく。
右の次は左。
左の次は、また左。
下、上。
同じところを何度も打ってみる…等。


決して、予想などさせない。
余裕なんて与えない。


たった数分後なのに、死々若丸は汗を流し、息を荒くしていた。
ギリ。と唇をかみしめ、必死に耐えるが、正直尻を叩かれるのがここまで辛いとは思っていなかった。
一言でも漏らせば、悲鳴となってしまう。

机に押し当てられた顔をゆがませ、荒れる息を押し殺し、連打に耐える。

「…ぐ」

「…はぁ!」

「…!!」


地獄のような、数分間だった。

 

 

「いい色に染まったな…」


はっと気づいたときには、身体にかかる付加が外れて自由になっていた。
慌てて、足元に下りていた袴を引っ張り上げ、屈辱で顔を赤くする。
ぎっと、視線だけで射殺せそうな迫力をこめてにらみつけるが、数歩離れたところに立っている蔵馬は涼しい顔。

そのまま、死々若丸のそばを通り過ぎ、脱衣場を出ようとする。

仕掛けようか――…と思った瞬間、

「まだ懲りないのか?」


そのささやくような言葉に死々若丸は固まる。
その隙に蔵馬は扉に手をかけた。


「今のままでは、この俺をも倒すことは出来ない。悔しかったら…強くなれ」

すっかりといつもの雰囲気にもどった蔵馬の言葉に、死々若丸はうなだれるしかなかった。
そして蔵馬は出て行った。

 

それから、しばらく放心状態だったが、のろのろと服を脱ぐ。
湯に入るためだった。
鏡を見、紅を通り越してところどころ青くなった痕を見て、死々若丸は決意した。


強くなる。
決定的な妖力値の違いを体感した。
半年のうちに妖力値100000P以上…

必ず強くなり、幽助はもちろん、蔵馬も倒す。


必ず……!!

 


この事件が表になることはもちろんなかったが、死々若丸の修行に一役買ったことは間違いない。
それからの成長には目覚ましいものがあったからである。
 

 

 

はやと

2008年9月17日

【再会】の続編ですwwwリクエストしてくださった方、ありがとうございました(^^)イメージと違ったらゴメンナサイ!

きっと蔵馬は100発以上叩いてるよ!性格的には黄泉よりもタチ悪いに違いない(笑)←でも1番好き♡

補足→黄泉の力が自分にとっては予測不可能なので、平手でもヒドイ状態(あざが付くほどの)してみましたw

じゃないと今回のスパの理由にならなくて☆強い者がヤられるってあんまり、理由思い浮かびませんねぇw

とゆーわけで、黄泉→蔵馬→死々若丸の連鎖でした(^▽^)

楽しんでいただければ幸いです♪

 

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