【伝説を庶民化してみた】

 

キラキラ輝く天の川…

年に1回の逢瀬…

それは、伝説となり下界の民は夢を託す――


*****

「それで?なーんでこーなってるのかな?キミは?」

「えへー(^▽^;)」


天の川のちょうど真ん中に位置している…小さな島。
本当に小屋が一つ建っているだけの小さな小さな島。
けれども、星の瞬きに照らされて赤や緑、青い、淡い光に彩られている様は幻想的だった。

神秘的な、一夜を共にできる城。

が、中にいる人物たちはおよそ神秘やら幻想とやらには程遠かった。


布団に胡坐をかいて、その膝に織姫を乗せている彦星(牽牛)。
眉をしかめて、膝の上の彼女を見下ろす。
織姫は、ただただ困ったように笑いながら、脅えていた。
胡坐からはみ出した足は頼りなげに投げ出され、手はぎゅ。と彦星の着物の膝部分を握っている。
彼女の着物はめくりあげられ、真白なお尻が丸出しになっていた。。


どっから見てもアヤしかった。


「どうしてこうなったのか、言ってごらん。ほら」

ぺちん!

「きゃん!」

軽くお尻をはたかれ、思わず小さく悲鳴をあげながら、織姫はなんとかこの状況を打破できないかな〜?とめまぐるしく頭を動かしていた。
なんとかしないと、ヤバい。
これはヤバい。

「あのね、その…」

「言い訳はいいんだよ。1年間、君がしてきた「おいた」を白状しろって言ってんの!」

ぺちん!

「あぅあぅ…」


――困ったよぉ

 

昔昔、業務をさぼって逢っていた恋人たちは罰せられ、星の長に一年に一度しか逢えないようにさせられてしまった。
1年間。
それは長寿を誇る星聖人にしてみたら大したことはないかもしれない。

それでも、いつでも会っていたい恋人たちにしてみたら、会えない時間が待ち遠しい。

そして、約束したのだ。


『仕事はちゃんとやる。規則正しい生活を送る。文は頻繁に送りあう。身体に気をつける…etc』


彦星は根は真面目な青年だったので、約束を守り、自分を律し、日々暮らしてきたのであった。
おかげで、牛たちの毛並みはピカピカで、この度星の長に褒められたばかりである。

織姫は…
根はいい子であることは間違いない。
が、女の子らしく気まぐれで飽きっぽい。

「えと…織物2枚、予定より足りなかった…」

「それと?」


言い訳を許さないような厳しい声と、この体勢。
諦めてぽつりぽつりと、話し始める。

「友達と遊びに行った」

「それはいいんだけど!」

「…会う一週間前に熱出した。」

「でしょ?なんで熱出したと思う?」

「…えとー」

「素直に答える!」

    ぺんぺんぺんっ!

「イタイイタイ!!」

お尻を連続で叩かれて、叫ぶ。

困ったなあ…はやく甘い雰囲気になってほしいよぉ☆


「織物の数がたりなくて…急いで織ってたら寝るの忘れて…でも遊びたかったから友達と出かけた…」

「どーして、そーゆー無茶するの!体調はちゃんと管理しなきゃダメでしょーが!織物の数が予定より足りないのは、毎日少しずつやってないからでしょ!」

「彦星…怒ってる?」

「怒ってる!」

Σ(゜△゜)
あぅぅぅ… 自業自得とはいえ、この状況は辛い。
恋しい人を呆れさせるつもりも怒らせるつもりもなかった。
そこまで考えが至らない自分…バカだぁ(><)


しょぼーんとした、織姫を見て彦星は苦笑した。
もちろん、うつむいてる彼女からは彼の表情が見えないのだが☆

――まったくバカな子だね。

怒ってる、と言いながら実際にはあんまり怒っていない。
だから、頭は冷静に動いてる。

今日は徹底的にヤルよ?

愛おしい人を心配することこそ、もどかしいものはない。
自分らは逢いたくても、逢えないのだから。
熱を出したら、行って看病したい。熱を出し、不安がっている彼女を慰めたい。
でも、それは叶わぬことなのだから。

気をつけていても体調を崩すことはある。
それは仕方がないが…
今回は無茶がたたって、熱を出した。明らかに自業自得である。
もう、こんなことさせやしないからな?


「もうしないから、もうやめようよ…」

弱弱しくつぶやく彼女の言葉は、明らかに逃げが入っていた。
ふと考え込んでいた、彼はきっと顔を引き締めた。

「だめ!反省してないようだな?」

パァン!

強めにお尻を打ち、それからもたたみかけるように確実に攻めていく。

「反省した!」

「してないね!姫は痛いのが嫌だから言ってるだけだろ?それは反省って言わないの!」

「いたぁい!」

「当たり前でしょ!お仕置きなんだから。
   …今日はたっぷりたっぷりと思い知らせてあげるからね」

「思い知らせてあげるからね」というところで凄味を増した低い声になって脅し、彦星は無言となって手のひらに力を込めた。

ぴしゃん!
ぴしゃん!
ぴしゃん!!

乾いた鋭い音が小屋中に響き、それに伴って織姫の悲鳴も交錯した。

イタイ!
あーん!痛い!
ヤダヤダァ!!


ぴしゃぁん!
ぴしゃん!!


真白かったお尻がみるみるうちに桃色に染まり、次第にその色を濃くしていく。

絶え間ない攻撃で、お尻がひりつき、耐えきれないほどの疼きをもって痛んだ。

じたばたと足が跳ね上げられ、手はますますの力をもって着物をつかむ。

「痛いよ〜!!」

ついにお尻をかばおうと伸ばした腕すらも、彼に封じ込められて自由を失い、彼女は叫ぶしかなかった。

もうしないぃぃ!
もうこんなことしない!!

痛い!

やめて!!

反省したぁ!したからぁ!!!


それでも、織姫の性格を知っているので、そう簡単にはやめない。
すぐ忘れるんだから!

「徹底的」という言葉が似合うくらい、彼はきっちりと叩いた。
お尻がまんべんなく紅くなり、熱が感じられるまで。
お尻の生地がすっかり叩きのばされ、皮膚が薄くなるくらい。

1年間の想いをこめて。

愛情をこめて。

容赦なく。

 


どのくらい時間が経ったのだろうか?

そろそろ、織姫の限界が近い、と思ったころやっと彦星はたたく手を止め、聞いた。

「何が悪かったの?」

「ぅ…」

「まだ足りないの?」

「ううん!違う!足りた!
  …無茶なことしたから熱だしたり、遊んでたから織物が足りなかったり…したの……
  姫がわるかったの。」

「そうだね。それにね、心配…したんだよ?」

「心配?」

「そうだよ。そう簡単に逢えないんだから。姫が病気になったって聞いたら心配するでしょ。それから、今年はもう逢えないのかと思った」

「え…?」

「病気になったら逢えないでしょ?」

「そっか…」

「ちゃんと考えて、日々過しなさい!自分は大事にすること!」

「はぃ…」


――まったく…手のかかる…(^^;)


「ほら!なんて言うの?」

ぺちん!

「った! …えと、ごめんなさい?」

「なんで疑問形?(笑)もっかい!」

ぴしゃん!

「ぁー!! ゴメンナサイ!!!(>△<)」

「はい、よくできました。」


よしよしwww

頭、ナデナデ☆

立たせて衣服を直そうとしたら、織姫がイヤイヤとかぶりを振った。

「おしり痛い☆まだこのままがいい」

「はいはい」

苦笑しながら、気持ちを切り替えた彼は、頭やらお尻をナデナデしてなぐさめる。
照れくさいのか、彼女は顔をずっと伏せたまま。

「お尻と目に星がいっぱい降ってきた…」

「ここは星の河…天の川だからね(^^)」

のんびりと穏やかな会話が心地よい。

怒ってない?

もう終わったことだからね。


たかが1日。
されど1日。

 

まだたっぷり余裕は残ってる。
残りの時間は楽しく、恋人らしく過ごそう?
お土産もあるんだよ(^^)


ホント?私もあるのよ!


来年は、お仕置きさせないでくれよ(笑)


もうしないもん(照)

 

 

小さな島の小さな小屋で、淡い光に包まれながら、恋人たちの夜は更けていった――

とある年の7月7日のことである。

                                                                                                                        

はやと

2008年7月7日

初の季節もの♪

てか、こんなことを書いてバチが当たらないかヒヤヒヤしているはやとです(笑)

悪気はないのです、ゆるして織姫&彦星さま!!(笑)

今年は雨も降ってるし、短冊に願は書いていないけれど…心の中でお願いするから聞いてね(^^)

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