【母からのきつい仕置き】

 


「妙(たえ)。この状態をせつめいしてもらおうか」

「母(かか)さま…」


完全に怯えている。
しかし、いくら愛おしい娘といえども、此度は許すわけにはいかない。

畳の上に真剣がむき身のまま放置され、鞘が乱雑に置かれている。
我が家に代々伝わる宝刀…不知火。
そして、壊れている神酒の入った杯。
もちろん畳の上はびしょびしょだ。


「ただの悪戯と申すなよ?」

「すみません、母さま…!どうしても、中身が知りたかったのです…!」


ほう、それで棚をのぼり、手の届かない場所に安置していた不知火を取ったと。
取る際に、神酒も一緒に取り落とし、杯を割ったと。
なんの言い訳にもならんな。

「決して触ってはならぬと申したはず。」

「こ…この前…父(とと)さまが…不知火の刃の美しさは当代一だとおっしゃるのを聞いて…どうしても見たくなりました…。」

「なぜ、むき身のままで放置した」

「…刃を見た瞬間、言いようもなく…恐れが湧いてきて…持っていることがままならなくなり…」


あのうつけ者め!

娘に悪影響を及ぼす輩が我が夫など…このツケは後でたっぷり支払ってもらおう…
しかし、今は妙を叱るのが先決だ。


「当たり前だ、馬鹿者!不知火の妖の刃にかかればそなたの命などあっという間になくなる!
 不知火の機嫌が悪ければ、自決を迫られていたところだ!
 神酒まで台無しにしよって…ただでは済まさぬぞ…!!!」

「お許しください!お許しください!!」

もう半泣きの妙だった。
不知火を鞘に収めて杯と一緒に置き、それがよく見える位置に正座し、言った。

「駄目だ。こい。嫌というほど灸をすえてやる。」


くにゃ。
顔がゆがみ、ぽろぽろと大粒の涙が流れる。

「いや…いや…」

何をされるのかがわかっているからだろう。
手を後ろ手にし、尻を隠すようにして後ずさっている。
そんなことをしても無駄だと言うに。

「妙。そなたのしたことは善き事か、悪い事か。答えなさい」

「…悪い事…でしたぁ… でも…」

「でも?なにか申し開きがあるなら言ってみぃ。全部聞いてやる。」

「……」

「悪い事をしたら、仕置きは当たり前じゃ。罰を逃れようとするほど、罪が重くなる…。
 これ以上、母を怒らせたくなければ素直に来る事じゃの。待つのは十だけ。
 十たっても、自分からこれなければ…問答無用で行くぞ」

「…!!」

「ひーぃ…ふーぅ…みーぃ…」


数を数えていくと迷っていた妙が、とうとう、よろよろと近づいてくる。
すでに泣いているが…
今回のようなことが2度とあってはならない。
言いつけを背くようなこともあってはならない。

今は、心を鬼にすべきだった。


間近まできた妙の手をひっぱり、片膝に落とした。
体の重さを感じて、成長を感じる。
着物の裾をめくりあげて、子どもらしい丸みを帯びた小さい尻をむき出しにする。


「母さま!母…さまぁ…!」

か細い悲鳴が聞こえるが、何も答えず、掌をふりあげてその尻に叩きつけた。


ぴしっ!


乾いた音が消える間もなく、連打する。

ぴしっ!ぴしゃん!ぴしゃん!ぴしゃん!!


最初から強めに叩いている。

「ぅぎゃぁぁぁん!!いたぁいいたぁぁぁい!!!」

すぐ、悲鳴は大きくなり絶叫にかわる。


「不知火に切られれば、この痛みの比ではないぞ!」

ビシィ!!

「ぎゃぁぁぁん!!」

じたばたと足も手も暴れているが、腰に手を回しているからか逃げ出すことはできない。


二十…

 三十…

   四十…

時間にしては短いが、連打のため真白い尻はすぐに桃色に色づき、そして紅と姿を変えてくる。


少し、速度を緩めてやった。


「この母の言うことを守らねば…!こういうことに…!なるのだぞ…!
                よぉく覚えているがいい!その痛みを!」

ばしん!

ぴしゃ!

ぴしゃ!

べちん!

びしー!


言い聞かせつつ、打っていく。

「かっ…母…さまぁ…!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!!」

「うぎゃぁん!」

「いたぁい!!!」

「いたぁいぃぃぃ!!あぁぁぁぁぁーーーー!!!」


顔を振り、必死に悶える中で、妙は叫びまくった。

可哀そうだがしかたない。幼い時と言えども秩序は伝えねば、やがて命に関わる。

 


百以上は叩いたであろうか。

 

小さい尻が残すところなく赤くなり、腫れあがってから、やっとその手を止めた。
ところどころ、青く痣がついている。


「妙。反省したか?」

「…は…はぃ…」

「不知火にみだりに触ること、言いつけに背くこと…もうしないな?」

「はぃ…けっして…もうけっしていたしませぬぅ!」

「最後に、不知火に謝れ」

「ご…ごめんなさいぃ…!」

「良し」

 

それから、体勢を変え、抱きしめてやった。


「妙も、この三好家の者。鍛練を積んで立派に成人をしたら、不知火はそなたのものになろうぞ。
 それまで、焦ることはない。わかったな?」

「私が不知火を…ですか?」

「あぁ。この刀は当主を選ぶ。選ばれるように、修行すれば、必ずやそうなるぞ」

「はい!ありがとうございます…!」


涙と鼻水できたなくなった顔をぬぐいつつ言ってやると、しょんぼりが笑い顔になった。
わが娘ながら、なんと愛らしいものよ。


ぎゅと、抱きしめ、尻の痕を撫でてやると、「痛い!痛い!」と言っていたがそのうち疲れたのか眠ってしまった。
布団を敷いてやり、寝かしつける。
当分は、痛みのため座るのもままならないだろうな。


不知火を、大人しくまた棚の上へ祀る。

怒っているかと思ったが、何故か機嫌が良い。
神酒も切れているというのにな。
まさか、妙を気に入ってるのか?


 

やがては妙も立派な影の者になろう。
その時になったら…助けてくれよ、不知火―――

 

はやと

2008年8月3日

 

唐突に始まりましたこの話。終わりも唐突です(^^;)スミマセン

てか、頭の中に突如湧いたので、そのままの勢いで書きました♪♪

題名が思いつかなくベタです。

ちったい子にしてはハードなお仕置きwww

補足説明(スパシーンがメインなので説明している暇がなかった)
   →三好家…領主の命令で戦う忍。不知火は妖刀で、かーちゃんのみに使える。 

数年後、里が焼き打ちにあって、一人生き残った妙ちゃんが不知火と共に復讐の旅に出かける…
で、その旅で色んな人たちと仲間になって…とかナントカ、話は頭の中に続く…☆
        

 

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