きり丸 

 

【危険なバイトにご注意の段】

 

忍術学園1年は組、摂津のきり丸!!

といえば、
超どけち・小銭は握ったら返さない・お金の計算は兆や京代までできるとゆー金儲け大好き少年であることは有名だ。

そんな彼は必殺アルバイター。

子守・洗濯・アサリ売り・トコロテン売り・モク拾い・
犬の散歩から置きふんどし、危険な合戦場のべんとー売りまでこなしている。
そのほかにもありとあらゆるバイトを経験していて・・・
そんな彼が今一番ハマっているのは、酔っ払いの引き取りである。

だが同居人の学園の担任、土井半助は危険を理由に反対していた(最新刊35巻参考♪)。

「だって、せんせーバイト代がいいんですー」

「ダメだ、盛り場に夜行くなんて情操教育に悪いっ。
お前はまだ10歳だろう?それに他のアルバイトもいっぱいしてるじゃないか」

「だって最近不況でバイト代が安くなってるんすよ?
今一番このバイトがいいんですって!」

「ダメだったらダメだ、危ないだろ?酔っ払いが絡んできたらどうする?
酔っ払い同士喧嘩して巻き込まれでもしたらどうするんだ!」

「えー、だって〜」

「だってもくそもないっ!!!」


とゆーやり取りの末、きり丸は土井先生に
「酔っ払いの引き取りバイト」は行なわないとゆー約束をさせられてしまった。
「ちぇっ」


だが、そんなことでどけち魂が動くはずもなく。
ひそかに機会をねらうことにしたきり丸である。
夜のバイトはこれくらいしかないし、一人いくらの勘定だから短期で楽だ。
だからやめる気などなかった。

 

機会は意外と早く訪れた。
土井先生が忍術学園教科担当だけの研究発表とかで1泊でいないのである。

「一人で大丈夫か?きり丸」

「え、大丈夫ですって〜・・・」

先生が出かければあのバイトができる〜。

コゼニコゼニィ〜♪♪

思わず目玉が小銭化するのを必死にこらえる。

「なるべく早めに帰るから。じゃあ、危ないことしちゃだめだぞ。
戸締りはしっかりと。宿題もやっとけよ!
トイレから出たあとはちゃんと手を洗って。あ、洗濯物のバイトはためすぎるな!えーとえーと」

「いってらっしゃ〜い(汗)」

心配性とゆーか教師的とゆーかくどくどと注意事項を言いながら、土井半助は出て行った。

 

「ふ〜、やっと行ったよ。よっしゃあ、バイトやるぞ〜!」

鬼の居ぬ間に何とやら、
燃えているきり丸は張り切ってまず犬の散歩のバイトに出かけた・・・。


****

そして待望の夜。
きり丸は町の飲み屋の集まっているところに出かけた。

「ちわー、引き取りのバイトさせてください」

「おっ、きりちゃん、久しぶりだね。早速だが頼むよ」

顔なじみの店の親父に挨拶すると、酔っ払って帰れなくなった町人を紹介される。

その町人がいつまでも店に居座り続けると迷惑になるので、
家か身元が分からない場合には役場へ送り届けるのだ。
送り届けてまた店に行くと、親父がバイト代を支払ってくれる。

そんな感じで4人くらいを連れて行ったきり丸は、5人目に取り掛かった。

「おじさん、お家どこ?かえろーねー」

手馴れた感じで話しかけて、町外れだとゆー男の家に向かう。
が、思わぬトラブルが起きた。

夜だが一杯やりたい人で道は賑わっていた為、
男と別の通行人の肩がぶつかり合って喧嘩に発展したのだ。

「んだとー、謝れよー」

「あ?そっちこそ謝れ!てやんでい!」

「ふざけるな!てめーが悪いんだろがぁ!」

「ねえ、おじさんたち・・・やめましょーよ。こんなところで・・・」

「ガキはすっこんでろぃ!」

どんっと突き飛ばされたきり丸は、途方にくれる。
争いを鎮めて帰らないと、送り届けたことにはならない。
もしかしたら金を減らされるかもしれない。

それにこんなところで争いを起こしたことで、バイトできなくなるかも!!

「まあまあ」

再度宥めにかかるが

「うるせんだよ!」

ばしっ!

今度は頬を叩かれ、喧嘩はますますヒートアップする。

口論からすぐにでも取っ組み合いになりそうだ。

周囲の人間は見ているだけで、「やれやれ」なんてはやし立てているだけ。

―――どうしよ・・・

きり丸は泣きたくなった。


「きり丸!」

!?

「きり丸!!」

人ごみから必死に自分を呼ぶ、聞き覚えのある声が近づいてくる。

「土井先生!!」

かきわけて出てきたのは、明日帰ってくるはずの土井先生だった。

「なにやってんだ、なんでこんなところにいる?」

「土井先生こそ明日帰るはずじゃ」

「早めに帰ってくるって言っただろう?それより・・・」

「話はあとッすよ、あの人たち止めてください!!喧嘩されちゃうとオレ・・・」

「・・・わかった」

悟ったらしい彼の先生は険しい顔になったが、それ以上何も言わず酔っ払いたちを引き離しにかかる。


「二人とも、やめてくださいよ。町中ですよ?それに・・・」

丁寧に呼びかけた言葉は、途中でさえぎられた。

「うるせーつってんだろう!口出しすんな!」

バキィ!!

「あっ先生!!」

拳が命中し、バランスをくずしかけた半助はたたらを踏んだ。

「ぅっく!」

がとどまり、切れた唇に手を当てながら今度は表情を変えた。

先ほどまでの愛想笑いを消し、目つきが剣呑なものとなる。
殺気を放ち睨みつけるとそのあまりの迫力に酔っ払いたちは冷や汗が流れるのを感じた。
きり丸も学園では見たことのない忍者の迫力に息をのむ。

「お酒は・・・ほどほどにしないと、皆に迷惑がかかりますよ?」

「う・・・」

「そろそろ酔いを醒ましましょうね・・・」

丁寧な口調ながら怒気をはらんで、ゆっくりと近づくと二人の男たちは完全に音を上げた。

「あ、酔いはさめたぜ」

「ああ、ちょっとふざけただけなんだよ。殴っちまってわるかったな・・・」

「もう喧嘩はしないですか?」

「ああ」

「じゃあ、もう家に帰ったほうがいいですね。酔いがさめたならこの子が送る必要もないですよね」

「ああ、必要ないよ・・・それじゃな」

ばつの悪そうな顔をしてこそこそと男たちは人ごみに消えた。
それによって野次馬たちもちらばる。


後にはあいかわらず険しい目の半助ときり丸が残った。

「先生・・・あの・・・」

「家に着いたら覚悟しろよ」

「・・・・・・」

いつもはお調子者のきり丸だが、自分の(バイトの)せいで半助に怪我を負わせてしまったこと、
約束を守らなかったことについての叱責が怖くて、しょんぼりと後についていく。
家までは二人とも無言で、きり丸はいたたまれない思いを味わっていた。

 


家に入るとまず、これまでのいきさつを聞かれた。
いつもと違う雰囲気の土井先生が怖くて嘘なんかつけない。
目線を下げうつむきながら白状していく。

すべてを聞き終わると、


「じゃあ、お前は最初からこのバイトをやる気だったんだな?」

怒り心頭に達した土井先生は立ち上がって、部屋を出て行った。

「・・・先生?」

ものすごく怒られるかと思っていたきり丸は、突然出て行かれて戸惑う。

が、さらに戻ってきた先生の持っているものを見て困惑する。

授業で使う長い竹定規・・・。


「きり丸、土間の方へ行ってかまどに手をつくんだ」

「まさか、それで・・・」

「お仕置きだ!!!」

「うそっしょ!?それで?ねー、止めましょうよ」

「嘘じゃない。早くしなさい!」

「やだ・・・もうしないから・・・!」

蒼くなって許しを請うが、許されず。
罪を厳しく諭されしぶしぶかまどの丸くカーブしているところ(ちょうど子どもサイズ)に手をついた。
自然とお尻が突き出る。
何度かお尻たたきをされたことがあるきり丸でも、定規で叩かれるのは初めてだった。

「先生、オレ・・・。やだよぉ・・・」

恐ろしげな武器にびびってしまい、きり丸は半泣きだ。
いつもなら許してもらえるのに今日はよほど怒っているらしい。

「絶対離すなよ」

と冷たく言われ、お仕置きは始まってしまった。

――ピシッ!!

音がして、袴に当たる。
袴からとはいえ平手よりも鋭い痛みに、きり丸は悲鳴を上げた。

「あっ」

思わず手を離してお尻をさすったが、「絶対に離すなと言ったぞ」と咎められまた手をつく。


「なんで言うことが聞けない?私がいなかったらどうするつもりだったんだ!?
危険だってあれほどいっただろーが!!」

激しい叱責とともにビシビシと、お尻を打たれきり丸はとうとう耐え切れなくなって泣き出した。

「ごめんなさーい」

10発ほど叩くと力尽きて座り込んでしまったきり丸を、抱き上げて今度は部屋の方に移す。

「今日は約束を破ったことと危ないことをしたことについて、たっぷり反省してもらうからな」

「やだ・・・っ」

弱々しい声で言ってみるが効果はなく、正座した膝にうつぶせにされ袴を脱がされる。
背中に片手を置かれ身動きが取れなくなった。
うっすらと桃色に変化したお尻を、もう片方の手が叩く。

「あと40回な」

「や、そんなにや・・・やだ!!」

バシ

バシ

バシ

バシッ

ただでさえ先ほどのダメージで痛めつけられたところに、平手で直に叩かれてきり丸は再度泣き出す。

 

先生!ごめん、もうしない。

もうやらないから。

約束も守るからぁ・・・・・・!

 


「うわああああああん」

永遠に続くと思われた、お仕置きが終わる。

が、叩かれた痛みと一度泣き出したら止まらない涙のため、そのままの姿勢できり丸は泣きじゃくっていた。
土井先生はそんな彼を慰めるように、頭をなでなでした。

「少しは懲りたか、きり丸?」

「・・・・・・」

「お前に怪我があったらどうするんだ?皆、心配するぞ?」

「・・・・・・」

「アルバイトは違うのにしろ」

「・・・・・・」

「私も少しは手伝うから」

「・・・本当に?」

おいおい、これに反応するのかよ☆
と内心で呆れたが、きり丸に少し元気が戻ったのを見て、ほっとする。
本当はこんなことしたくない、土井先生であった。

厳しくしすぎたかと、今になって少し後悔もしているが・・・根っから明るいきり丸はもう立ち直ってきたようだ。
泣きはらして赤い目をこすりながら膝から降り、袴を直すときり丸は土井先生に抱きつく。

「先生、ごめんなさい!」

「うん、分かったらもうするな。悪いと思ったら夕飯を作ってくれ。
急いで帰ってきたから、まだ食べてないんだ」

「任せといてください!!」

自然と二人に笑顔が見られ、穏やかな空気が流れた。


忍術学園1年は組、摂津のきり丸!!

根は優しく素直な、どけち少年である。
 

 
 
はやと

2004年05月06日(木)

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