【ドクササコの出城を潰せ!の段】

 

事の発端は…お約束の如く、1年は組からだった。


父の受け持つ、忍術学園の1年生クラス11人。
裏裏山マラソンの帰りに、まとめて皆ドクササコ忍者に捕まったという。

ドクササコはドクタケ城と協定を結ぶために、生徒を捕まえて忍術学園に対しての切り札を手土産にする思惑があるらしい。

 


私は父に頼みがあり…忍術学園に訪れていた。

母に手紙を書いてほしいのだ。

いつもへき地で夫の帰りを待っている母にとっては、父の帰宅は一日千秋の思いだろう。
だからか、昨日家へ帰ったとき…

「いいこと?利吉。父上に必ず…必ずお返事をもらってくるのですよ…。
 さもなければどうなるか…わかっているわよねw(にっこり)」

どうなるかは、わかりたくもないが。
返事をもらうまでは帰れないことは確かなのだ。


しかし、手紙をもらいにきたらこの様だ。

「今は手紙なんてかいている暇はない!」
一刀両断され、それもそうかと思う。

とゆーことで、1年は組救出に駆り出されることとなった。


やれやれ…


*****


「悪いね、利吉くん。」

「いえ…土井先生。
  それより子どもたちが心配ですね…」

「なぁに、それほど悪いことにはならないさ」

「なぜですか、父上。」

「なぜなら…もうすでに忍術学園総出で助けに行っているからだ。」

「!!ならば、私はなんのために…」

「ドクタケと組んだ、ドクササコの新しい出城を叩き潰す。当分は動けないようにしてやるのさ」

「土井先生と私と、父上で…ですか?」

「いや、土井先生はドクタケに連れていかれた1年は組のみんなのところへ行ってもらう。利吉、お前は私と一緒に来い」

「…!」

「わかりました。
 山田先生、利吉くん。
  あとはよろしくお願いします。」

「おう、また後でな」


土井先生は去り、私と父上だけが残った。
嫌な予感がする…


「私が一緒に…なぜですか?」

「それはね…!」

 

     きらりん☆☆☆

 

振り向くと、瞬きをする頃には…女装した父が立っていた。
山田伝蔵…46歳。
わが父ながらその変装の術が気持ち悪(自主規制)

                                                               

「伝子よ〜んvvvv」

「ぅげ!」

                                                                   

「なぁに?ぅげ、とは何よ。早くお前も利子ちゃんになりなさい!!」

しなをつくりながら、髪をかきあげ…完璧に女性になりきっている。
えええええ!?
私も!?

「あったりまえよぉ!利子ちゃんとあたしでドクササコ軍の中に潜入するの!
ドクタケもドクササコも1年は組と助けに入った忍術学園との戦いで、気を取られるでしょ!
その隙にとっとと出城爆破しちゃえば楽じゃない!
いい?時間がないの、ぐずぐずしない!」

「しかし、父う」

「伝子さんとお呼び!!!」

げしぃ!!!

だ…だめだ…蹴りが飛んできた。
伝子になったら、もう…止められるものはいない…(−_−;)

言う内容とは裏腹に、そう簡単なことではないが
まぁ、父と私ならやりとげる自信は…ある。


しかし、女装しなくてもなんか別にやり方があるだろーに。

と思いながらも、もう止められないので仕方ない。


しぶしぶ私も変装して、出城に向かうことにした。

 

 

ドクササコの新しい出城は忍び込みにくい造りになっている。
だから、内部に侵入するにはこれが一番手っ取り早いらしい…。

「すみませーん!このチラシ見たんですけど〜」
伝子さんが持っている紙は、町で見つけた
「急募、パート  料理掃除洗濯をしてくれる女の人募集」
のチラシ。
ドクササコ城の門番は愛想笑いをした。


「いやー、パートさんでしょ?昨日枠がうまっちゃったんでね、悪いけど…」

「なぁに!?あたしたちここまで必死に歩いてきたのよ!!
 お金がほしいの!」

「あ…あんた、本当に女?」

「まっ、失礼しちゃう!あたしが女以外の何物に見えるって言うのよ!
 …ほら、利子ちゃんあんたもなんか言ったら?」

「は…はい。あの…お願いします…!
 どうか、1日でもいいので雇ってくださいませんか?
 病気がちの父の薬代が欲しいのです…」

私を見た門番は、相好を一気に崩した。

「それはかわいそうに…。」

ふ。
我ながらうまいと思う。
この上目づかい。睫毛すら震わして。
清らかな乙女の必死の頼み。

断れる男はそういないな。

 

「何事だ?」

もう少しで陥落する、という時に声がかけられた。
内部から、門番よりはるかに上等な衣をまとった男が現れた。

「はっ、これは殿。
 村娘たちがパートにやとってほしい、と現れたのでございます」

「ふーん。そうか」


殿、これがドクササコ城の殿か。

脂ぎったのっぺりした顔。
しかし眼だけは小さく鋭い。
髭がむさくるしい。

と思ったら、この男。
相好を崩して、顔を近づけてきた。
まずい…!

「可愛い顔立ちをしておるの…♪
 どれ、こっちへこい。」

「あぁ、何をなさいますのっ?」

思わず顔が引きつる。

田舎娘の格好をしているから、抵抗しづらいっ
肩を引き寄せられて、必死に顔をそむける。
城主と村娘だと、どうしても立場が弱くなるからな。
本来だったら瞬殺してもいいんだが、ここは門だし、門番も見てるし、それに父も見てる…
は…恥ずかしい…!

                                                      


ぺたぺたぺた。
首筋や髪や肩。
触ってくる手つきが妙にいやらしい。

「やめてください…!」なんて逃れようとしても、引きよせられて離れられない。


ぞっと背中に虫唾が走るような感覚を覚える。

「そちは掃除のおばちゃんなんかにならんで良い。
 気に入ったからな。
 今宵わしの寝室にくるがよい…なぁ?」

出会ってすぐに手をつけようとするこの好色ぶり。
そして…

んーーーーーーっと唾で濡れたタラコ唇が伸びてくるにあたって、私の理性も一時キレた。
気持ち悪いにもほどがある。


「い…イヤァーーーー!!!」

思いきり突き飛ばすついでに、グーで殴ってしまった。

はっ

ヤバイ。


この私としたことが…(こんな時でも女言葉なのは流石だが)

 


「こっこの…!」

尻もちをついた、城主の顔がみるみるうちに怒気に歪んでくる。

作戦は失敗した。
目立たずに城に忍び込むつもりが…

手打ちにされる前に逃げなくては…!

 


と思ったら、

「利子!アンタなにしてるのーーーーー!!!」

 

すさまじい怒声が後ろから浴びせられた。
あまりにすさまじいので、私だけでなく、門番と城主もびくついたくらいだ。

「城主様にむかって!
 失礼にもほどがあるわよ!!」

まなじりを釣り上げた伝子さんが、ものすごい勢いで突進してくる。
何!?

引っ張られると次の瞬間には、私は伝子さんの片ひざに落とされていた。

 

ペンペンペンペンペンペンペン!!!!!!!


そしてそのまま、お尻に衝撃が走った!!!

「な!?」

☆☆!!!!
∑(゜Д゜)


思わず、素でうめいてしまうくらい、びっくりした。

急に体勢がかわり、着物こそ脱がされなかったがお尻をぶたれている。
腰はがっしり掴まれていて逃げられない。
けっこうな力で叩かれている。


は…恥ずかしい…!!

子どもではないのに!
膝に乗せられて…


そんな私のうろたえなどお構いなく、伝子さんは

「お仕置きよーーーー!!!」


ペンペンペンペンペン!!!

怒涛の勢いで連打され、お尻に痛みが走る。


「この悪い娘!悪い娘!
 城主さまにあやまりなさい!!!」

叱りつけてくる声音は、本気で怒っているようで迫力がある。

 

「ご…ごめんなさーーーい!!!」

「高貴な方を押すなんて…恥を知りなさい!!」

「お…お許し…ください〜〜〜〜!!!!」

            

                        

 

 

「もっとよ!
 罰を受けて、何回も謝ってお詫びなさい!」

バシーーーーン!!!
バシーーー!!
ビシーーー!!


ますます叩かれる力が増し、演技でなく辛くてたまらない。
お尻が火がついたように熱を増し、びりびりと加わる激痛にあえぐ。

汗がじんわり出て、悲鳴も押し殺せない。

「あぁ!!」

「イタイ〜!!」

「おゆるしくださーーーい!」

「ごめんなさい!!」

余裕もない。恥ずかしいが
命じられるままに謝罪の言葉を叫び続けた。

痛い

痛い…

もう…やめ…!あぁぁ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらいの時間が経ったであろうか。

「…もうよい!」

夕刻から時間が経ち、薄暗くなってからやっと城主から止める声がかかった。


「…妹の非礼をおゆるしいただけるんですの?」

「ふん。小娘のやることだ。
 気にしていてもしかたあるまい」

「まぁ、流石、城主様。懐の大きさが違いますわね!」

「…ふん。
 明日からはどんどんこきつかってやるからな!」

「もちろんです。精一杯お仕えさせていただきますわ。
 ほら、利子!アンタからもお礼を言いなさい」

お尻の痛さが苦しくて、叫んだ為頭がくらくらしている。
頭を下げるのは気が進まなかったが、仕方ない。
汗をかき真っ赤になった乱れた顔を見られるのは嫌だからな。


「ありがとうございます…」


こうして、私たちはやっとドクササコの出城に入ることができたのである。

 

 


****

今日はここに泊まるように言われた、狭い部屋の中。
やっと素に戻れる。

「父上!」

「伝子さんとおよびなさいと言ってるでしょ!」

べしっ

またお尻をはたかれて、さっきの痛みがぶり返す。
私が恨みがましい気持ちになるのも仕方ないと思わないか?


「なぜあんなことを!?」

ひりひりと今もお尻は疼き、内部からの熱がじくじくと痛む。
手で擦ると、感触で腫れているのが分かった。
最悪だ!
ここまでしなくても良いものを…


「でもそのおかげで、迫真の演技だったじゃない。
 こうやって城の中にいるんだから、文句言わないの」

「でも…!」

 

「未熟者が!」

おっと。
急に元に戻らないでほしい。
伝子の変装を説いた、我が父山田伝蔵が厳しい目つきで見つめてきた。

 

どき、とする。


「変装の出来に慢心し、咄嗟の出来事にも臨機応変に対応できず。
 逃げることを考えたな?」

う。

「フリーの売れっ子忍者だからと言って、天狗になっているとこういう痛い目にあうのだということを覚えておけ。
これは父からの仕置きだ。」

「…!! …はい。
 ……申し訳ありません」


…。

そう言われると、何も言えなかった。

く。
数々の忍務をこなしてきたというのに。
父にはまだまだかなわないのか…。
まだまだ修行が足りないな…
 

悔しい思いを押し殺して
自分も忍び装束になる。


「利吉、まぁ思いきり暴れていいぞ」

「はい。
 時間差で爆破が起こるようにいたします。」

「では、ワシは関係のない人物を逃していこう」

「これが終わったら、おわかりですね?」

「あぁ、母さんへの手紙を書くから。
 また忍術学園で落ち合おう」

「はい!」

 

慢心するな!
と叩き込まれて、頭が冷えて行く。
この屈辱の礼もまとめて、あの色ボケ城主に返してやろう。

 

 

 

―――この夜中、ドクササコ城の出城は壊滅した。

色ボケ城主は、顔をぼこぼこに殴り昏倒させた。これで良し。


その間に忍術学園総出でドクタケ城を攻め、1年は組を助け出したようだ。
ドクタケ城とドクササコの協定は未遂に終わった。

そして、私は母からの言いつけを守ることができたのだった。

 

 


*****

数週間後。


今度は母から洗濯物を預かり、父のいる忍術学園に訪れた。


またもや、騒がしい。

「こんにちは」

「おお!利吉!ちょうど良かった!
 お前も来い!!!」

「え(汗)」


今度はは組の中でも特に問題を起こす、乱きりしんが事件に巻き込まれたという。
まったく、相変わらず…


「またお世話をかけるね、利吉くん」

「いえ…、大丈夫ですよ」

まぁ、逆らえないな。

前回のように叱られないように、細心の注意を払うとしようか。

苦笑いの土井先生に、治ったお尻をこっそり触りながら答えた。

 

 

 

 

2009年6月3日

はやと

今回は、伝子さん/利子ちゃんです。
女装させてみました。
一応、伝子さん曰く「読者サービス」だそうですがw

カッコいい利吉を想像していた方すみません(^^;)
萌えって何?おいしいの?(・ω・)ってカンジですね…(エヘヘ)
(本人だけが楽しい)

利吉、ゴメンw
災難だね!


落書きの挿絵もつけて、がんばりました!

 

inserted by FC2 system