【大事件】

 

10月24日金曜日。
三好圭吾。

 

今日は、学校で芋掘りがあった。
軍手とスコップをビニール袋に入れて、水筒を下げて。
学校から歩いて15分の畑に、4年生のお兄さんと手をつないで行ったのだ。


今日の水筒はゴウレンジャーだぞ!
青色のカッコイイやつ!!
この前運動会があったときに、お母さんに頼んで買ってもらった新しいヤツなんだ。
僕はこれが自慢でしかたない。
朝からゴキゲンだったよ!

もちろん、友達には「カッコイイじゃん!」って褒められた。
余計に嬉しくなるね!

あと、僕はさつま芋だぁい好き♪
それを言ったら、幼馴染のふーちゃんもにこにこしながら「あたしもだぁいすき!」と言ってた。
だから二人でどれくらい大きいのをとれるのか、競争することにしたんだ!
ふーちゃんは女の子だから、4年生のお姉さんと一緒。
離れ離れになっちゃうから、後で見せあいっこするんだ!

 

芋掘りは楽しかった。
ツルがあるところに、お芋は埋まってる。
それを手で掘りだしてみると、細いのや太いのや色んなのでてくる。
宝探しみたいだ。
一緒に組んでた4年生のお兄さんもいっぱいとってた。

持って行けるのは一人3本までだけど、その中でも選りすぐりの3本を選んだよ。
まんまるな形と、ぶっといやつと、足があるような不思議な形!
足があるなんてすごいじゃん!
これは絶対に見せないと!
お母さんにお土産にしたら喜ぶかもしれないよ♪


これ見たら、ふーちゃんびっくりするだろうな(^^)


僕は楽しみでしかたなかった♪

 

****


学校について解散になって、休み時間になったらさっそく見せにいったよ。
机に並べて自慢自慢♪
でも、ふーちゃんも大きいヤツとれてた。
長いのもあった。
もしかして、重さもおんなじくらいかもしれない。

すごいね!
すごいね!

「ねぇ、ちょっと持たせて〜」

「いいよ〜、ふーちゃんのも持たせて」


お互いに持ちっこしたとき、事件は起きた。


「ふーちゃん、何持ってるの?」

「あ、これね、けいちゃんの…」

みうちゃんが話しかけてきたとき、ふーちゃんがふりむいて肘で机の上にあったゴウレンジャー水筒を落としたのだ!!

「あぁ!」

そして慌てた拍子に、つまづいて持ってたお芋を落とした!


「あーーーーーー!!!」


僕は固まった。
ふーちゃんも固まった。
ついでにみうちゃんも固まってた。


ゴウレンジャーの水筒のフタに割れ目(亀裂)が入って、転がり
足付きのさつま芋は真っ二つになってたのだった…。

 

僕は頭が真っ白になった。

 


「あぁっ…あー…けいちゃんゴメン!!ゴメンね!!」


慌ててふーちゃんが謝ってきたけど、頭が真っ白だった。
そして…
急に悲しくなった。
怒りも湧いてきた。

僕のゴウレンジャー。
新しい水筒。

僕のお芋…
お母さんに一番見せたかった足付きのトクベツなお芋…


それが割れた。
二つも割れた。


う…こんなのって…
こんなのってアリかよ…!

ふーちゃんのバカ!!


「っ!!バカ!!!」

涙が浮かんできた。
思いっきり怒鳴った。

ビクン。

ふーちゃんが思いっきり顔を歪めて…
ぽろぽろぽろぽろ…

「けいちゃん、ごめん…」

「しらないよ!どうするんだよ、これ!弁償しろよ!!」


なんでふーちゃんが泣くんだよ!
ぼくの方が泣きたいよ。
もう嫌だ!!

「ふーちゃんのバカ!知らない!!もうふーちゃんなんか大嫌い!!」

「ふ…ふ…うぇぇぇぇぇ〜…」

頭に血がのぼって、どうにもならなかった。
思いっきり怒鳴って、ふーちゃんのお芋も床にたたきつけた。
お芋はやっぱり真っ二つになった。

それでも、気がすまずにふーちゃんのプリキュア水筒も投げた。
からからと乾いた音をたてて、ころがった。
それから、ふーちゃんの頭を思いっきりはたいて…
僕は教室を飛び出した。

 

 

バカバカバカバカバカバカ!!!!
大っきらい。
なんで、あんなにドジなんだ!!
僕の水筒。
僕の足付きお芋。
返せよ!!!


思いっきり走って、…もう。
どうしようもなくなって、誰も来なそうな体育準備室で泣いた。
誰も来ないと思ったのに、しばらく泣いてたら、4年生の担任の男の先生がやってきてわけを聞いてきた。

聞いてくれることがなんだかほっとして、泣ながらところどころ話して。

慰められながら、手をつないで吉野先生(担任)のところへ送ってもらった。
先生は驚いた顔してたけど、ぎゅっと抱きしめて、水筒が壊れたこととお芋が割れたことを一緒に残念がってくれた。

「せっかくのカッコイイ水筒だったのにね」
「お母さんに見せたかったんだよね」

うん。うん。
頷いていると、ティッシュで涙を拭いてくれて

「よし、じゃぁ代わりのカッコイイお芋探しにいこっか」と言ったのだった。

「え?」

「一人三本まででしょ?余ったお芋は給食の先生がお料理してくれるのよ。
 だから給食室に届けてあるの。
 いっぱいあるから…そんなに素敵なのはあんまりないかもしれないけど、他のカッコイイやつあるかもしれないわよ!探しに行こう!」

そして水筒についても、お母さんに手紙を書いてくれることを約束してくれた。

まだ悲しかったけど。

さっきまでの悲しさがなんだか、急に薄らいだようだった。

 

一緒に給食室へ向かう途中、先生は言った。

「如月さんのこと、まだ怒ってる?」

こくん。
悲しさが薄らいだけど、まだふーちゃんについてはなんだかモヤモヤしてる。

「そっか。でもさ、如月さんに悪気がないってことはわかる?」

うん。
そうなんだ。
ふーちゃんはワザとじゃなくて、たまたまやっちゃっただけだ。
でもバカすぎる。

「その後怒った三好くんはどうしちゃったかな?」

ぎく。
急に心臓がドキドキし始めた。
ワザとじゃなかったけど、あんまり腹が立ったから。
ふーちゃんの長いお芋も割った。
ふーちゃんの水筒も投げた。
それから…
頭、思いっきり叩いた。


うつむいた僕を見て、先生は苦笑しながら

「おあいこだと先生は思うな」


う…。

悲しい気持ちはあるけど、まだ怒りたい気持ちはあるけど…
ふーちゃんにおんなじことしちゃった。
…大泣きしてた。
ごめんって言いながら。


どきどきどきどき…

さっきは感じなかった…ドキドキ感で心が痛い。
でも、なんだか心が認めたくなくて。
そっぽ向いて、

「だってだって…

ふーちゃん大バカなんだもん!授業中遊んでばっかだし。お祭りのときは迷子になるし!だからお尻ぺんぺんされるんだ!!今日もされればいいんだ!!」

と言ってしまった。


一緒に歩いてた先生がぴた。っと止まった。


「三好くん…」

その声が低くなって、僕は慌てた。
違う。
こんなことを言いたいんじゃない。
でも、でも、いっぺん言っちゃったら止まんない…


すっと屈みこんで先生がまっすぐ目を見てきた。

さっきの優しい目と違って、怖いくらいな真剣な目だった。

「言っちゃいけないこと言ってるよ。」

「しらない!ふーちゃんなんか」

「そう…」

その瞬間先生がまた立ち上がって、強引に僕の腕をひっぱった。

「給食室行く前に、如月さんと同じ気持ちにさせてあげる!」

ズンズンズン。
歩いて行って、途中の図画工作室に入って行った。
ここは…

腕を引っ張られながら、僕はもっとドキドキしてた。
周りの景色がセピア色になって、頭は「ふーちゃんと同じ」という言葉で頭が回っていた。
まさか。

まさか…。


でも、この前のぞき見たことが思い出されて。

 

 


そこからはなんだか、夢を見ているようだった。

 

 


先生が、椅子に座って。
僕のことを抱き上げて。
膝に乗せたんだ!!!

 

 

 

 

 


膝にのって見る風景はいつもの授業の時と、全く違ってた。
床がすぐ近くだよ。
イスの脚と机の染みが見える。

不思議な気分だった。


胸はどきどきして苦しいのに、頭の中はどこか冷静だった。


そしてなんだか………嬉しかった。
ずっとしたかったことができたような。


でも、その不思議な気分は、先生の掌がお尻に降ってくるまでだった。

ぱん!

お尻に衝撃が走って、それからすぐにジ〜〜ンとした痛みが襲った。
でも、それだけじゃなくって、またパンパンパン!!と連続して叩かれた。

「うわぁぁ!」

思わず叫んだ。

それだけじゃなくて、何回か叩かれたあと、ズボンとパンツを一緒に下ろされた。
ひやっと空気を感じて、お腹の底からヘンな気分が盛り上がってくる。

そこに
ピシャン!!!

とさっきよりも痛いのが飛んできた!!


ピシャン!
ぴしゃん!!
ぴしゃん!!
バチン!

「ぅあっ」

「いたい!」

ナンダコレ!!
ナンデコンナニイタイノ??


不思議な気分は、痛みによって消えていく。
痛いってことしか思い浮かばない。

身をよじって避けようとするけど、腰を抑えられていて逃げだせない。
もがく。
もがいてる間に叩かれる。

「如月さんは如月さん、三好くんは三好くんよ!
 人のことはいいの。失敗しない人なんていないんだよ。
 自分が如月さんだったら、って考えてごらん!
 そんな風に思われて嬉しい?そんな風に言われて嬉しい?」

お尻を叩きながら先生が、厳しい声で言ってくる。

嬉しい?
ううん。

僕がふーちゃんだったら…
嬉しくない。

泣いているふーちゃんの姿が思い出された。


お尻が痛い。

ひりひりする。
じんじんする。
あぁっ


ああぁぁぁぁ いたいよぅ…!!

もうヤメテ…!!

「やだぁ!やだぁ!いたい〜」

本気の声で悲鳴を上げる。
勝手に涙もにじんで来た。

「いたぁい〜 やめて〜!!もうやだー!やめて〜!!」

「お尻ぺんの後は、如月さん頑張って授業聞いてたでしょ?
 同じ間違いしないように頑張ってるってことが大事なんだよ。わかる?」

うん。
わかる。
だから!

「さっきの言葉は、先生許さないよ。
 怒ってるからって言って、言っていいことと悪いことがあるの。
 如月さんに謝りなさい!!」

ぴしっ!
ぴしゃん!!

「ごめん〜ふーちゃん!ごめんなさい〜〜!!」

「もう言わない?」

ぴしゃん!
ぴしゃん!!
ぴしゃん!!!

「言わない〜〜!」

バッチン!!

「はい、おしまい!!」


最後はとびっきり痛かったような気がする…。
それから、先生はズボンとパンツを治して抱っこしてくれた。
この格好も、この前とおんなじだね。

「水筒とお芋のことは、先生もかわいそうだなぁって思ってるよ。
 でも、さっきの言葉を聞いたらきっと如月さんもっともっと悲しくなっちゃうよ。
 如月さんは三好くんのこと、大好きなんだもん。
 自分が壊しちゃってどうしよう?って思ってるだろうし、ごめんねって思ってる。
 だからもう許してあげたらどうかな?
 どう?」


うん。

こくりと頷いた。
目をつぶってしばらく、よしよしと背中をさすられて、先生のあったかさを感じてた。
お尻が痛い。
ふーちゃんも痛かったんだね。
こんなに痛かったんだね。

こんなに痛いの、されるのは嫌だよね。

ぺんされたらざまぁみろなんて思ってごめん。


…あ、そうだ。

「先生、給食室行ったら、ふーちゃんのお芋も選んでいい?…僕わっちゃったんだ。」

「もちろん!!えらいね、そこに気がついて。優しいね、如月さん、きっと喜ぶよ」

にこっと笑ってくれて、僕はえへへってわらった。
なんだか色々怒って、悲しくなったけどさ。
最初から先生に相談すれば良かったのかなぁ。

バカって僕もみたいだな…

 

もう時計を見ると、時間がだいぶ過ぎてた。
大いそぎで給食室に行って、足付きのはなかったけど、双子になってる大きいお芋を見つけた。
カタチが2つともそっくり!
それを持って教室にいった。

教室では、ふーちゃんの机の周りには友達がいっぱい。
泣きじゃくってるふーちゃんを必死に慰めてるようだ。
僕の机の上には、セロハンテープで止めた足付きのお芋、やっぱりセロハンテープでとめた水筒。
それから、ふうちゃんのお芋とプリキュア水筒が並んで置いてあった。


「けいご!」

気づいた倫太が気遣うように、声をかけてくる。
その声は「大丈夫?」というのと「なんとかしろよ!」という意味だと思う。
他の女の子も、僕を見て「許してあげて」という顔を向ける。

大丈夫だよ。

もう怒ってないもの。


「ふーちゃん」

なるべく優しく声をかける。
怖がらせないように。

「……!」

まだ顔を埋めて泣いてる。

「もう怒ってないよ。」

「…」

「ホントに怒ってないよ」

おずおずとゆっくりと顔があげられる。
目だけじゃなく、顔中が真赤だった。

「…ホント?」

「うん」

「…ごめんねぇ…!ごめんねぇ…!!」

ぼろぼろとまた涙が出てくる。

「大丈夫!泣きやんで。いいもの持ってきたんだよ」

「い…いいもの…?」

ホラ。
って見せた双子のお芋に、ふーちゃんの目がまんまるになった!

 

 


******

先生はその後の帰りの時間を、お芋と水筒が割れちゃった僕たちの話をしてた。
さっき、ぺんされながら聞いたようなこと。
間違いがあっても許してあげられる人になれるといいね。って。
皆、すぐ許してあげた僕のことを「えらい」って思ったようだった。
…本当はそんなにえらくないんだけどね☆

ふーちゃんにヒドイこと言っちゃったし。
だから、先生にお尻叩かれたんだしさ。
あんまり、みんなが褒めるから気まり悪くなっちゃって叱られたこと言いたくなったけど、このことは先生との内緒だ。
ふーちゃんに直接言ったわけじゃないから、まだ大丈夫なんだって。
それに…やっぱり恥ずかしいもんね。


初めての、お尻ペンは…痛かった…ヨ。

 


ふーちゃんと一緒に帰った。

セロハンテープでとめた足付きのももらったから、お芋4個だ!
いっぱい食べられるね!

まだ、涙の痕はのこってたけど、もうふーちゃんは泣いてない。
僕もまだちょっぴり、お尻痛かったけど、素知らぬふり。

二人ともニコニコ顔に戻ってる。
仲良しの方が嬉しいね。

「ママにスイートポテト作ってもらう。今日けいちゃん、ウチ来ない?一緒に作ろうよ!」

「ホント?うん!行く!ランドセルおいてお母さんに言ったらすぐ行くから!!」


なんだかホントに嬉しくなってきた!!


ふーちゃんといったんバイバイして、僕はうちに向かって一目散に走り出した。

 

 

はやと

2008年10月26日

いつもながら長い…(−−)

小学生の心理描写を想像しながら書くのは楽しいけど、長くなる〜www

果たして小学校3年生の男女がここまで仲が良いものか…

でもいいんですw圭吾くんと風子ちゃんは仲良しでいくんです(´∀`)

季節はハロウィンですが、ネタは芋掘りでした(笑)なつかしい?

 

ついに圭吾くんもスパされることに…。やっとここまでこぎつけたぞ!

しかし、まだ「お仕置き」という言葉を知らないのでした(笑)

水筒はこのあと、手紙を見たお母さんが同情して新しいの買ってくれたようです。

今度はメタリックブルーのステンレス製(割れたのはプラスチック)に変えてくれたので、おっこどしても大丈夫!

という設定もあったけど、入らなかったよ。。。

スイートポテトが食べたいよぅ。

楽しんでいただけたら、幸いですw

感想ありましたら、拍手か掲示板にゼヒお願いします(*^▽^*)

 

 

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