【魔法使いと弟子】  

                               挿絵を見たくない方こちら

 

 

くつくつくつ。

煮込む音を聞きながら、鍋に私はビンに詰まった秘薬を垂らす。


さらさらだった液体はとろーりと粘着をおびて…

紫へと色を変える。


モヤモヤと心の中に溜まっている、負の感情すべてを注ぎ込んで…



呪いの言葉を吐きながら…
よぉくよぉく混ぜ合わせて。


仕上げに口紅と火を投げ入れたら…






ぼぉおおおおおおん!!!!







部屋が爆発しちゃったよ…(−−;)




「あ!コラーーーーー!!!
 何してるんだお前はーーーーー!!!」

ばたばたと慌ただしく部屋にかけこんできた途端、怒鳴り声。

思わず私は耳をふさいだ。

あー、うるさい!



「勝手に魔法使ったらいけないって言ってただろうが!」

「魔術 だもん!」

「同じことだーーーーーー!!!」


ぷんすか怒りながら、襟首ひっつかんで私を部屋の外へ引きずり出すお師匠さん。

長い髪に長身。
切れ長の眼。
涼しげな口元。 



                                                         

 


黙っていれば、美青年魔法使いなんだけど…
実は怒りっぽいのよねー。



爆発したショックで部屋はメタメタなんだけど、そこはそれ。

お師匠さんの指の一振りで…いや5回くらいかな〜。
元通りになった。
あー、便利な魔法だ。
いつかこんな魔法を、サラっと使いこなす魔法使いになりたいなぁ〜。


そんなことを思いながら、ぼーっと座りこんでると修復を終えた師匠が振り向いた。
もともと吊り目なのが、もっと吊りあがってる。
ヤバイ。

かなりお怒りだ!


…と。かがみこんだと思ったら
べしっと両ほっぺたに痛みが走った。
勢いよく挟み込むんだもん。
イーターイー(><)

「ケガは!?」

「腕すりむきましたー」

「…はぁ」

ため息をついて、がっくりする師匠。
なんだよ、軽傷で悪いか??

「コラ」

眉間にしわがくっきり見える。

「どーしてこんなことしたんだ?」

「黙秘権を行使します」

ぷい。
とそっぽむきたかったけど。
今も顔を挟み込んでるから、目線が…
逃げられない〜〜〜www

ぐぐぐ…と力を入れてもがいてると


お師匠さんが、にっこりと笑った。
いや、訂正。
ニッタリと笑った。

表現一つで、不気味さがわかるってもんだろ?

「そうか。素直に言えないというのだな。 
 それならそれでいいぞ。
 吐かせる方法はいくらでもある。
 さぁ…こっちへおいで」


う…

「ご…拷問反対!落ち着いて落ち着いて!!」

「私はとても落ち着いているとも。
 落ち着いてないのはお前だろう。」

暴れる私をあっさりと魔法で縛りあげて、直したばかりの魔法専用の部屋に連れていく。

ぽい。
床に転がすと、師匠は次々と恐ろしいことを言い出した。


「この薬は、かけると身体中をナメクジが這うような不快な感触を味あわせる。その効果は1日。せいぜいのたうちまわってもらおうか?」

「この薬は、小さい花火の精が宿ってる。熱さと小さい火傷が全身を覆う」

「言わないなら、ノネズミの姿に変えて猫に追いかけさせようか?」

「コマドリに姿を変えて小さい籠の中へ閉じ込めようか?3日ほど」


い…
いやぁぁぁ〜〜〜〜!!!

やだやだ〜!!
ナメクジ大っ嫌い!
私は閉所恐怖症なんだよ!
火傷なんて聞いただけで恐ろしいし、猫と命のかけっこするのもまっぴらごめんよ!

「言います!
 お師匠様が近頃まったく構ってくれなかったので、つまらなくなり
 魔術を使って虜薬を作ろうとしました!!」


虜薬…文字通り、使った相手にメロメロとトリコになってしまう薬である。
(でも、作るの難しかった。なにがいけなかったんだろう…)

あぁ!
恥ずかしー!
だから言いたくなかったんだよ〜!


「…ふぅん♪」

ニヤ。
勝ち誇ったように見下ろす笑顔が、かっこよくて…ムカツク。


「そぉかそぉか、最近お前に構うのを忘れていたね。
 悪かったね…」

ぎゅぅ。
床から拾い上げて、私を抱きしめほおずりすると優しい声でそんなこと言った。

「安心しろ。あんな薬や魔法使うものか。
 可愛い可愛い弟子に酷だよなぁ…」

あぁ。
なんか嬉しいかも。
そうだよ!弟子ほったらかしたらいけないんだい!
至近距離で近づいてきた顔と、すりすりする感触。
抱きしめられた腕の包容力に思わず心臓がドキンドキンするwww
顔があつくなって…

お師匠さま…v


「でも、ダメだよ…
 おイタする子は罰しなければ…」

え?
Σ(゜д゜)

耳元に聞こえた、心地よい声がいきなりそんなこと言った。

「そ…!なぁ…!なにをっ…!」

抱きしめてきた腕が力を増し、全く動きがとれない。
へびに睨まれたカエル…状態!!



ぐぅんと、抱きあげられてパニック状態になる。

そんな私の状態を知ってか知らずか、涼しい顔で師匠は椅子に座った。
ぺいっ
膝に落とされた瞬間縄が外れた。

じたばた。

思いっきり逃げようとする。
が、今度は、師匠の手が腰に回って逃げられない!!



「薬や魔法なんかに頼らなくても、お前なんかこの掌で十分。
 逃げようと暴れてもいいぞ。
 お前の力で揺らぐほど、私は弱くないからな。」
 
ち…チキショォ!

「まぁ、素直に受けられないだけ、罰が重くなるだけだがな。
 言いつけを守らなかった上に反抗的なんて、悪いコだ!」


バシン!

「いったぁ〜!」

「まだまだこれからだぞ〜!」

バシンバシンバシン!!!

お尻をぶたれて、私は悲鳴を上げた。


「私が忙しいのは知ってるだろう?魔術協会に頼まれた資料を作ってるんだ。
 次世代の子供たちに良い魔法使いになってもらおうとだなぁ…
 そんな大事な仕事の邪魔をするくらい寂しかったんだろう?」

う。
大事な用なのは知ってたけど…
知ってたけど〜〜〜〜


「だから、存分にかまってあげようね。
 イヤ…というほどね♪」

バシビシバシビシー!!

「ぎゃー!もーイヤァァァァ〜〜〜!!」

「きこえませーん♪」

なんだってー!

いた!
いら…い…いらいいらい〜〜〜(>□<)゜。(←言えてない)


バシバシと力強く叩かれてるのだ。
そりゃー、イヤだって!
めっちゃ痛いって!
もがいてもとれない、腰にまわしてる腕がにーくーい〜!


ぺらん。

「きゃー、お師匠さまのえっちぃぃぃぃ〜〜!!」

「人聞きの悪い。これは躾です!
 お前がたっぷりと思い知るようにね♪」

ローブとスカートがめくられ、パンツまで膝におろされちゃった。
その恥ずかしさと不安さで、ぎゅぅと目をつぶる。
ひりひりするお尻に風を感じる暇もなく


ぴしゃん!!!


今度は手のひらが直接肌に当たるもんだから、甲高い音。
びりびりした振動がお尻全体に広がる。

ぴしゃ!ぴしゃん!ぴしゃん!


「やぁ〜〜〜!!」

「ん。その叫び声いいよー。そそるよー」

「もーだめー!いたぁぃぃぃぃぃ!」

師匠…
楽しんでるなんてひどい〜〜〜(><)
ガマンできないよぉぉぉ!
でも…ダメでもガマンできなくても許してくれないと、どうしようもない。
わーわー騒いで、痛みを紛らわせるだけ。
それからしばらくは、無我夢中で叫び暴れることとなった。



 

 

                                  
 








「おい、おーい、我が弟子よ。生きてるか?」

「…死んでます!」

「ょっし、生きてたな〜♪」


げしげしげし。
乱暴に髪がなでられる。
もぉ…、ぐちゃぐちゃだぁ。

叫びすぎて、のどはカラカラだし
涙が勝手に出てきて目がシパシパするし
暴れすぎて、へっとへとだ…。
なにより、まだお尻がまる出しだし、激痛………

何回ぶたれたんだよぅ。

こんな姿見られるのが、恥ずかしいし
もーヤだ!


お尻ぺんぺんは終わったけど、膝にうつぶせたまま動けない。
顔が見られないように、腕をクロスさせて隠す。


しばらくそのままでいたかったけど…

「仕方ないなぁ〜」

師匠が、よっこいしょっと、私を抱き上げて膝に横向きで座らせた。
身長差があるから、足が床に届かなくてプラプラしてる。

「痛かったか?」

「痛かったです!」

「当たり前だ、そうしたんだからなっ」

…ぐぅ。


「言いつけ破った悪いコはだれだ?」

「…自分です…」

「反省は?」

「…してる」

耳元で美ボイス炸裂させないでほしい…
もう…!
また心臓がドキンドキンしてきた…!

「なんか言うことは?」

「…ご…ごめんなさい…!」


「よし、イイコに戻ったな♪」

にこ。さっきの邪悪な笑みとは違う優しい笑顔。
なんか、すごーっく泣きたくなるほど嬉しくなった。

「もうちょっと待ってくれ。そうしたら遊んでやるから。
 そうだなぁ…あと3日くらいかな。」

3日。3日かぁ…それなら待ってやってもいいなぁ。

こくこく頷いたら、「商談成立!」って、アメをくれた。
魔法で出した、黄色のハートのアメ。
なめたらバナナとレモンの味がした(*^ー^*) 


                                                  
 

 



そうして、師匠はまた部屋に閉じこもり仕事、私は他の用事しながらそれが終わるのを待ってる。
(屋敷の掃除とか容器の洗い物とかは弟子=私の役目なのだ)

寂しくは…なかった。

なんたって、ひりひりするお尻の痛みは3日間消えなかったからだ。
不思議なことに、お尻をさするとあの時のドキドキ感や美ボイス。顔なんかをすぐ思い出せる。
きゃーきゃー思い出しては、喜んでいたら、あっとゆーまに3日間が過ぎた。


なにして遊んでくれるのかなぁ…♪♪
マジック遊園地つれてってほしいな!
あと、森にハイキングも!
お師匠さんのお友達のとこにも連れてってほしいんだ!

さぁ、遊ぼう!!!

私は、ワクワクしながら、お師匠さんの部屋をノックした―――






…しかし、入室したら多忙な魔法使いは爆睡。
その後は、次なる仕事が待っており弟子の願いはかなえられなかった。

それに激怒した弟子は…

――冒頭に戻る。

またこのお話のようなことが繰り返されるのであった…。


 

 




はやと
2009年12月1日

 

軽いハナシっすね!書いてて、けっこう面白かったです(*^▽^*)お気に入り!


魔法使い師匠のイメージは、赤ずきんチャチャのセラヴィー先生♪

弟子は…チャチャじゃないなぁ〜。
誰だろー。

落書きもつけてみた(恥)うれしい顔
(相変わらず、スパシーンはカーが書けない…たらーっ(汗)

 

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