【虜】
この湧き上がってくる感情は…
泣きたくなるような、切ない想い…とでもいうのだろうか。
ケインの切っ先を向けられた恐怖なのであろうか。
「ぬいで」
その言葉に逆らおうとする気もなく、おずおずと下着を下ろす。
膝まで。
下着が絡まって拙く歩くことしかできない。
貴方への数歩の道。
熱いような、ひんやりとしたような不思議な気分を味わいながら、覚悟を決めて前に進み出る。
束の間の包容。
そっと額に接吻されるのを感じてとろけてから、甘い地獄が幕を開ける。
何本もの赤い筋がこの身に刻まれる―――
辛い。
でもそれだけでなく、たしかに嬉しいと思っているのだ。
誰もが出来ることではない。
誰も耐えることはできない。
そう。
私だけ!
この切り裂かれるような痛みの狭間で、叫んでも、逃げださないのは。
逃げずに真正面から受け止めて、そして耐える。
無言で与えられる痛みの中、注いでくれる愛情を、お尻から、全身から感じ取る!
それこそが至上の幸せ。
そんなカラクリにいつしか、私は虜になり堕ちていったのだ。
2009年6月3日
はやと