【七夕祭り】

 

ヤバい!

ヤバいよ!!

ふーちゃぁん…どこ行っちゃったんだよぉ…

探そうにもこの人ごみの中…
小さい姿を探すのは難しい…。

心臓がきゅぅっとしめつけられて、ドクドクドクドクと早いリズムで打ってくる。
余計急がせるように――…

 


******

7月7日、近くの神社で七夕祭りがある。

ちゃんと屋台のお店も出て、夜8時から花火がちょっとだけど打ち上げられるんだ。

それは小学生の僕らからしてみれば一大イベント。

「いきたーいいきたーい!」と騒ぎまくったよ!
それで、近所に住んでる仲良しのふーちゃんと僕のお母さんと3人で行くことが決まったんだ。
ふーちゃんのママはお仕事があったからね。
お母さんとふーちゃんママも大の仲良しなんだ。

「じゃぁ、よろしくおねがいします(^^)」

「はい、よろしくね、ふーちゃん」

「ありがとう、おばちゃん!」

ふーちゃんは、水色の浴衣を着ていてとても嬉しそうで、僕も嬉しくなった。
僕は…ただのTシャツに半ズボンだけどさ☆

お母さんは僕たちに約束させた。

「圭吾とふーちゃんはしっかりと手をつないでね。人が多いから迷子になったらなかなか見つけられないんだからね?
 こわーいオジサンがさらっちゃうかもしれないからね?お母さんから離れないこと!」

「「はーい!」」

神社に着く前だったけど、手をつないだ。
なんだか、特別なことしてるみたいで楽しい!

「ふふっ」

僕たちは笑い合った。

ここまでは順調だったんだよ。

 


最初、七夕へのお願い事を短冊に書いて。
ふーちゃんは「キュアアクアになりたい」って書いてた。
ぷっ(笑)
キュアアクアなんて、実際にいないじゃないか。
でも、それを言うとふーちゃんが泣くからさ。ナイショw
僕は…「カブトゴールドカード欲しい」って書いた。
ゴールドカードはレアカードでなかなか手に入らないんだ!
こっちの方がゲンジツテキだよな〜…

と思ったら、お母さんは「3キロやせますように」って書いてた。
こっちの方が現実的だったよ(−▽−)


それから、花火の場所取りをしにいった。
お母さんが、シートを用意しているときに頼んでみた。

「ねぇ、屋台見に行ってきてもいい?」

「ちょっと待ってて。シートを留めたら一緒に行くから」

「ううん、ふーちゃんと2人だけで行きたい!」

だって冒険したかったんだ。
一緒に屋台見て、お菓子とかおもちゃとか買いたい。
お母さんいると、あれはダメこれはダメって言うにきまってるし。

「ダメ〜、ここがわからなくなったらどうするの?迷子になっちゃうかもしれないでしょ!」

「大丈夫だよー、ほら目印の神社の鳥居あるし。絶対大丈夫だから!」

「でも…」

「ふーちゃんもけいちゃんと行ってきたいなぁ。ちょっとだけだから…」

お、いいぞ、ふーちゃん!
二人で頼んだら、お母さんが悩んでる。

「ちゃんと手をつないでるのよ?お菓子は300円までにしなさいよ?本当に大丈夫かしら…?」

「大丈夫だいじょうぶ! じゃ、行ってくるね!!」

もー、お母さんうるさいんだから。

でも、無事に2人だけで屋台を見に行くことができた。


人がいっぱいだぁ…!

屋台もいっぱい。
焼きそば、フランクフルト、チョコバナナ、わたあめ、たまごせんべい、たこ焼き…
金魚すくいに射的に、ヨーヨー、スーパーボールすくい、…

どれもこれも心躍る。
けど…「500円」しかお小遣い持ってないや…

しばらくはぷらぷらと歩いた。

おしゃべりしながらさ。

でも2人の目が釘付けになるところがあったんだ。

「お面」と「くじ」
その屋台は隣り合わせになっていた。
ふーちゃんは「キュアアクアのお面」に、僕は「くじ」に賞品として3等に「カブトゴールドカード」があるのを見つけたんだ!
(ちなみに1等はTVで、2等はi podだったけどどーでもいいや)
すごいすごい!!
すごい!
二人とも、お願い事が叶うかも!?

気が焦ってたんだ。

隣同士のお店だから迷子にならないと思った。

だから手を離して、それぞれのお店に向かった。

早く欲しかったから。

 

くじは、200円。僕が持ってたのは500円。
…2回か。


渾身の願いをこめて、紙をとる。

「ハイ、1回目は残念賞。このなかからお菓子とってっていーよー」

「くっそー、もっかい!!」

3等だ、3等!!

「はい、6等ね〜、キーホルダー。この中から好きなのどうぞ〜」

あーあー…お願い事効かなかったじゃないか…がっかりしているとおにーさんが聞いてきた。

「もう1回やるかい?」

「…100円しかない…」

悔しくて、目に涙が浮かんできた。
そしたら…

「よっし、坊主泣くなよ!内緒で特別にもう1回ひかせてやるからさ」

「ホント!?」

「あぁ、早くしな!」

神様…お願い…!

「おっ、3等だ!良かったな、坊主!!」

僕はびっくりした。
本当に!?本当にいいの!?

本当に…カブトゴールドカードGETしちゃったぜ!!!
わーい!
神様、ありがと!!

「ありがとう!おにーさん!」

「はいはい!またね〜」


僕はカブトゴールドカードを大事に財布の中にしまうと…
キョロキョロ見回した。

あれ…

お面を買うのにそんなに時間かかんないよね?

3回もやってたから、けっこう時間経っちゃった…

ふーちゃん?どこ??

お面屋さん行ってみた。
でも、ふーちゃんはいない。

ちょっと探してみたけど、近くにふーちゃんいない…


僕は一気に青ざめていくのが自分でもわかった。

 


「迷子にならないのよ?」「2人だけで大丈夫?」

お母さんの言葉がよみがえってくる。

「怖いおじさんにつれてかれちゃうからね!」


ふーちゃん…

僕はレアカードをGETできた嬉しさもすっとんで、とにかくあわてた。

ちょっとうろうろしてみたけど、だめ。
大人の人も子どももいっぱい。
ふーちゃんのおかっぱの頭も水色の浴衣も見かけない。
でも、お母さんに言ったら怒られる…。

困ったなぁ…


「ふーちゃーん!ふーちゃーん!!」

ためしに怒鳴ってみたけど…ダメだった…。


もう、ダメだ…
やっぱり、お母さんに話して探してもらおう…。

泣きたくなった。

 

*****

「おかーさーん!!」

鳥居の近くまで戻ると、シートの上でお母さんが休んでた。

「圭…!アンタなんでひとりで!?」

「ふーちゃんいなくなっちゃったぁ…!」

「…!このバカ!」

!!!思ったとおり、雷が落ちてきた。
お母さん、怒るとけっこう怖いんだぜ。
でも、今僕を怒っても仕方ない、と思ったらしい。

「アンタはここにいなさい!ふーちゃんが帰ってくるかもしれないから!」

「うん…」

お面屋さんではぐれたことを話すと、わかったようでお母さんは出て行った。

お母さんでも探せるかな…?


なんだか、すごい不安。

ふーちゃん、ちょっとオマヌケだから、自分で鳥居まで戻ってこれるかなぁ?
怖いおじさんに連れてかれちゃってたらどうしよう?

僕がいけなかったんだ…

 

神様…

織姫さま…彦星さま…

お願い…僕、もうレアカードいるなんて言わない。
だから、お願い!ふーちゃんが戻ってきますように…!!!

 


どれくらいたったのかな?

しばらくしたら花火が打ち上げられ、思わずそのきれいさに見とれた。

ドドーン!!パチパチ!ドーン!!!

お腹に響くような音をさせて、色とりどりの火花が散ってる。
そして…

「圭吾!」

お母さんの声で僕は我に帰った。

小柄な体がお母さんに抱かれてる。

「ふーちゃん!?」

「そうよ。迷子センターにいたわ。ほら。どうする?ふーちゃん」

顔をうずめて、イヤイヤと首振ってる。


「そう…いいわ。もう今日は帰りましょう」

「えー!?」

「圭吾!元はと言えばアンタが手を離したからでしょ!文句言わずに帰るわよ!」

ちぇ。
でも、戻ってきてくれてよかった…(^^*)
ほっとした。


…帰り道、お母さんは怒りっぱなしだった。

「もー、アンタを信じたお母さんがバカだったわよ!」
「なにが絶対大丈夫よ。」
「ふーちゃん、こわかったのよね?」

さっきから口をきゅっと結んでしょんぼりしてる、ふーちゃんの髪をやさしく撫でながら言ってる。
なんだよー、ふーちゃんがすぐ、くじのお店にくれば良かったのにさ。

ぺん!

「った!」

…頭はたかれた(^^;)

「ふーちゃんはまだちっちゃいでしょ!!」

なんだそれー?
僕が5月生まれでふーちゃんが1月生まれだから?


もー、すっかり面白くなくなってずんずん歩いた。
なんだよ!おかーさんが迷子になっちゃえばよかったぜ!

 


ふーちゃんの家につくとお母さんは、さっそく頭を下げて謝った。

「ごめんなさーい、如月さん」

「あらぁ、早かったですね〜」

「それが…」

事情、とやらを話してる。
みるみるうちに、ふーちゃんのママは驚いた顔になっていた。

「まぁ、そうですか…でも三好さんが気になさることありませんわ。…これ!風子!」

びくぅΣ(○□○)
今は僕と手をつないでるふーちゃんの体がびくっとした。

まずい雰囲気になってきたな…と思った時。

Rrrrrrr

「ハイ、もしもし?え、あなた!?ちょっと…わかった。今行くから」

その時、ケータイが鳴ってお母さんは、慌ただしく言った。

「すみません、主人からなんですけど…ちょっと届け物を会社の方までしなければならなくなって…」

「あら」

「圭吾…アンタひとりでお留守番できる?」

「できるよっ」

「それでしたら、圭吾くんをウチでお預かりしましょうか?ねぇ、圭吾くん」

「え…」

その時、きゅっとTシャツの裾を握るふーちゃんを感じた。

   イカナイデ…

そう言ってるみたいだ…

「うん…」

「ま、すみません!圭吾いい子にしてるのよ!」

「いいですよ〜、気になさらないでください。それにこちらこそ、大変ご迷惑かけたみたいで…」

ぺこぺこと大人同士はにこやかに頭を下げて…それからお母さんはお父さんの会社に行っちゃった。


「さて、と。ゆっくり話聞かせてちょうだい?風子。圭吾くん」
にっこり。

なんだか、怖いよ…
おばさん、いつも優しいのに。


リビングに入ると、ブドウジュース出してもらって、僕らはいろいろ聞かれた。
正直に…
どうして迷子になっちゃったのかを…。


「風子、なんでお面屋さんで買ったあと、すぐ圭吾くんのところに行かなかったの?」

「あのね… あのね… ボールがあったの」

「ボール?」

「きれいなボールが飛んできて、それでころころって…」

…ふーちゃん、がんばれ(^^;)
説明、がんばれ!

「向こうに行ったから拾おうとして追いかけて。そしたら、くじ屋さんもお面屋さんもわかんなくなっちゃった。」

「ふーーーー」

ふーちゃんママはため息をついた。

「つまり、全部風子が勝手にやったことなのね?」

「うん…」

「迷子になったらいけないって言われてたのに?忘れちゃったの?」

「うん…」

あーあー、ふーちゃんらしいや。
僕はちょっと面白くなったけど。
ふーちゃんママは違ったみたいだ。

「おいでっ!」

急に厳しい口調になると、ふーちゃんの体をひっぱって膝に乗せた。


 ――え!?


この格好は…?

急激に思い出される…先日の光景。


「あー、ヤダヤダヤダァ!!」

じたばたしているふーちゃんをおさえて、浴衣の裾をめくってふーちゃんママはパンツまでおろしちゃった。
ぺろんとした白いお尻。

ドキドキドキドキドキドキドキ…!!!

急激に心臓が痛くなってきた。

びっくりして口もきけなかった。

「風子の悪いところ!お約束忘れちゃうのは!すぐ忘れちゃうんだから!」

ぺちん!

ママの手がふーちゃんのお尻に振り下ろされた…!!

ぺちん!

ぺちん!

ぺちん!!


怒りながら、ふーちゃんママはしっかりとお尻をぶってる。

「あああぁーんぁーぁーあーん!!(>□<)゜゜。」

ふーちゃんは大泣きになって。。大粒の涙がぽろぽろ☆

痛…そうだ…

痛い…よね?

お尻、ピンクになっちゃったもん。

この前、図画工作室で先生にぺんぺんされてた。
その時を思い出して、僕は…
とにかく、びっくりしてた。

頭がうまく働かないよ…。

ふーちゃん…

 

「お約束守れないのは良い子?悪い子?」

「わぁぁぁぁん!!わるいーーーー!!」

「悪い子はお尻ぺんぺんです!!」

「いやぁぁぁん!!やあああぁん!!うぁわあああん!!」


どきどきどき…
体と目が熱い…
目が…離せない…

「もーしないーもーしない〜〜!!!」

ぺちん!

ぱちん!!

 
 ――うぅ…


「おばちゃん!やめて!」

「?」

気がついたら、僕は叫んでた。

「僕がいけなかったんだ。そばについてなかったから!!」

「…圭吾くん」

「お尻ぶつなら…  …僕をぶってよ!!ふーちゃんがかわいそうだ!」


ドキドキドキドキ…

言っちゃった…

僕も痛い目に会うのかな…?

お尻、ピンクにされちゃうのかな?

怖いよ…。


「圭吾くんは気にしなくてもいいのよ。風子がいけなかったんだからっ」

「そんなことない!僕も…約束わすれちゃったもん」

ありったけの勇気をこめて、にらんだ。
ふーちゃんだけぺんぺんされるなんてかわいそうだもん!!

「圭吾くん…わかった。お膝いらっしゃい」

ふーちゃんを下ろし、手招きする。

足が震えるのを感じた。

ゆっくり近づくと、ひょいっと体がもちあげられてふーちゃんママの膝に置かれた。
お腹が膝にあたって、手足がぶらぶらしてる。
不安な気持ちでいっぱい。
心細くて、ちらっとふーちゃんを見たら、びっくりしたようにこっちを見てた。


「いくわょ〜?」
はぁーと掌に息をふきかけてる音がした。

怖い…!

怖い!!!

ぎゅっと目をつぶった―――…!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ぺん

「??」

ぺん

「もー、二人ともお約束やぶっちゃだめよ?」

「はい…」

ぺん

「はい、じゃ、おわり!」


?????

ちっとも痛くなかった…

ズボンもおろされなかったし…

1…2…3…?
3回だけ…?


「もー、圭吾くんの優しいー♪ 良かったね、風子!」

ぎゅーっと抱きしめられて、僕はひたすら混乱した。
ふーちゃんも目をまんまるくしてる。

とにかく…もう…怒ってないってことかな?

「風ちゃん?もうお約束やぶったりしないわね?」

「うん」

「ごめんなさいは?」

「ゴメンナサイ」

「よっし、じゃぁ、スイカ切ってあげる!ちょっと待っててね♪」

急にご機嫌になったふーちゃんママは、居間の向こうの台所へ消えていった。
なんでだろ?

 

あとにはふーちゃんと僕。

「けいちゃん、ありがとう」

顔が真っ赤で、少し照れたようなふーちゃんがおずおずと言った。

「ううん、お尻…大丈夫?」

「うん。まだひりひりするけど、もう大丈夫」

「そうなんだ…」

うぁ、なんだかすごい恥ずかしいよ!
あ、そうだ!

「俺、カブトゴールドカードゲットしたぜ!」

「えーすごいね!」

「ふーちゃんは?」

「ほら、キュアアクアのお面。かわいいでしょ??」

「うん、可愛い!良かったね!」

「七夕のお願いきいたんだね!!」

まだちょっと泣いた痕がついてたけど、ふーちゃんはにっこり笑った。
良かった!

それから、スイカ食べて、スイカの汁でべたべたになったからって、ふーちゃん二人でお風呂に入った。
さっきよりも、白くなってたけど…それでも、うっすらとピンクのお尻が見えた…
思い出すのはさっきのお仕置きの時間。
そして、ふーちゃんママの膝に乗った時の不安な気分。


僕は、お湯につかりながら、またドキドキする胸を押さえた。

ねぇ…


僕…どうして…

こんなに気になるんだろう…??


どうしてかな…?

 

しばらく、そのドキドキは消えそうもなかった。

 長かったなぁ…(^^;)すみません。

すぐ長くなるのがはやとの悪いクセ☆

何故ふーちゃんママがご機嫌になったか、それは「自分の娘を一生懸命守る圭吾くん」のことを可愛くなってしまったからです。

たぶん、圭吾母にその後話して、二人して笑い合うつもりでしょうwwww

そして、痛い思いをしなかった圭吾くんは、ほっとしたやら残念(!?)やら悶々としそうです(笑)

ふーちゃんは、小学校3年生にしては幼い。のんびりおマヌケちゃんタイプでしょうw

前回、1980年くらいの設定してたのに、一気にイマドキになっちゃった。もう舞台2008年でいいです(笑)

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