【のぞき見】

 

東桜小学校 3年4組 みよしけいご。


あのね、ぼくには気になってる女の子がいるんだ。

お家が近いから、ずっと幼稚園から一緒。
友達のきさらぎふうこちゃん。

その子はね…うんと…なんて言っていいのかな…

まぬけって言っちゃ可哀想だし、ドジっていうのかな…
あ、わかった…!

不器用な子なんだよ。


先生に、よく怒られてる。


宿題とか教科書とか忘れることが多いし
授業中はラクガキばっかり。
でも、本人悪気はなくてさ。
今日もとっても楽しそうにしてる。

楽しそうに、鼻歌までうたって…

すると、先生は気づいちゃうだろ?

パタンと音をたてて教科書を閉じ、わざとコツコツ靴音を響かせて近づくんだ。

普通ならここで、あわてる。


でも、ふーちゃんは気付かない。

「コラ!」

先生が、「メッ」ってこわ〜い顔して、ふーちゃんのノートを取り上げた。

「あっ、あっ…!」

さすがに気づいて、こまぁ〜った顔になる。
まゆ毛がきゅっと下がって、手がどこに行けばいいのかわからなくなってうろうろ。

「如月さん。今は何の時間ですか?」

「んーっと、算数…」

「ぶー!いいえ、今は国語の時間よ」

「…」

こんな時、クラスのみんなは「またか」って顔して見てるだけ。
最初のころ、みんなが笑ったら先生が怒ったんだ。
「お友達のことを笑うんじゃありません!」って。
だから、笑えない。

「如月さん、後で先生のところにいらっしゃい」

「ぁい…」

ため息をついて先生が言うと、ふーちゃんも消え入りそうな声で返事した。

 


それからしばらくは、ふーちゃんはまじめな顔で授業に出てる。
先生も、また元のやさしい先生に戻って漢字とか教えてくれた。

でも…

ぼくは、気になって気になって仕方なかった。
なにかって?


――後で先生のところにいらっしゃい。


なにされるんだろう?
ふーちゃんは怒られるんだろうか…

それがなんだか、気になって気になって仕方なかった…

 

*****

2時間目が終わったら、
20分休み。

長いお休みで、うれしいはずの時間に
とぼとぼと、ふーちゃんが職員室に向かう。


ついていこう!


決めた。

なのに…「けいご!遊びに行こうぜ」

友達が来た。
あっ、行っちゃう。ふーちゃんが行っちゃう。

「ごめん、おれ…おなかが痛くなってきてさ」

「大丈夫か?」

「うん。保健室いってくるから、外で遊んでていいよ」

「ついてってやろうか?」

「いいよ!ひとりで行けるから!」

ごめん、凛太。今日だけは見逃して。

凛太たちが出ていくのを見て、ぼくは急いで職員室に行った。
けど、先生とふーちゃんがいない。
どこにいったんだろう?

きょろきょろと見回してたら、廊下のはじっこの図画工作室に2人が入っていくのを見つけた。

心がどきんって跳ね上がる。

そーっとそーっとちかづく…

なにしてるんだろ?
なんで先生はこんなとこまでいくの?
ぼくはなんでおいかけてるの?

わかんないけど…
ふーちゃんをほっとけないもの。


図画工作室のとなりは準備室。
こっそり入り込んだ。
気分はすっかりスパイ。

準備室から、図画工作室につながるドアの真ん中ににガラスがある。

のぞきこんだ。

 

!!!!

のぞきこんだら…すごいものが見えたんだ。
ぼくは…口から心臓が出そうになるくらいびっくりした。

だって。


ふーちゃんは、椅子に座った先生のお膝に乗ってさ…


はだかのお尻をぺんぺんされてたんだから。

白いパンツが膝におろされてる。

「うぇーーーん」

ここの位置からだと、顔が見えない。
けど、泣き声が聞こえた。
足をすっごいばたばたさせてる。
お尻に先生の手が降りると、びくんって体がはねるんだ。

ぴしゃん!

ぴちん!

聞こえるのは泣き声だけじゃなく、お尻を叩く音も…少しだけ…


どきどきどきどき

どきどきどき

ぼくの心臓もすごい音なってる。
こら、静かにしろよ。
バレちゃうだろ!


けど、気づかれなかった。


お尻ぺんぺん。

なんかそれは…すごく…どきどきして…
ふーちゃんには悪いけど…わくわくした面白いものに見えたんだ。

ぴしゃん

ぴしゃん!


目が離せない。

そのうちに…

ぼくの体が熱くなってきた。

ふーちゃん…
先生…

気になるのはどっちなんだろう?

ぼくもあんな風にされたいのかな?
それとも…?


「ごめんなしゃーぃ!!」

って叫び声で、はっとした。

先生は最後に、ぴしゃんって叩いてから…
パンツをあげてスカートを治して。
それからだっこして、よしよしってふーちゃんの頭をなでてあげていた。
なにか言ってるけどそれは聞こえない。
でも、ふーちゃんは安心したみたいに甘えてる。


どきどきどきどき

まだ心臓がなってるけど。
逃げなくちゃ。

そっと、はいはいをして入口まで近づいて…
そーっと扉をあけて、きょろきょろ周りに人がいないか確かめる。

よし!

いまだ!!!

走って走って…
3年4組まで戻る。

「けいご、お腹治ったの?」

「うん!でも、もうちょっと休む」

 

夢中で走って、疲れた。
机に座って
目を閉じると、ぐるぐるぐるぐる…

先生の手…

ふーちゃんのお尻と足…

ぴしゃん!って音…

赤くなったお尻…

泣き顔…

ぎゅーって抱きしめられている姿…

ぐるぐるまわって見えた…


それは…それは…
なんて…

面白い。

ごめん。ふーちゃん。


ね…

お尻ぺんぺんって…
どんな気分?

痛かった?

どのくらい痛かった?

お膝の上ってどんな気分?


ぼくも…

悪いことすれば…

お尻ぺんぺんされちゃうのかなぁ??


…でもそんな勇気…ないけどな…

 

ふーちゃん、ごめん。

ぼく…もう1回、見たい……

 

見たいな…

 

 

       

はやと  2008年06月23日

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