【がんばれ、ちみっこ】

 

魔人ブウとの戦いが終わり平和な日々が始まった…。

のだが、悟飯は悟天とトランクスにひとつだけ約束をさせた。

「毎週水曜日にはピッコロの元で朝から夕方まで修行をすること」

いつまた地球を狙うやつが来るかもわからないし、平和な状態では体もなまるというものだ。
せっかく素質があるのにそれではもったいない。
自分は高校で忙しく、相手もしにくい。
悟空やべジータも生き返っているのだが、人に教えることでは師匠の方が上手いと悟飯は思っている。
それにあの二人は、自分の修行の方が忙しいだろう。


というわけで、子どもたちは神の宮殿へ毎週通うこととなった。


最初はデンデにも会えるし、強くなるのも好きだし喜んで行っていた悟天とトランクスであったが、
2ヶ月もたった今ではすっかり行くのが苦痛になっていた。

なぜなら、
理由

1・修行の内容がつまらない
二人の戦闘力には劣っているピッコロであったが、経験の差や頭でははるかに勝っていた。
その彼が感じているのは、二人の精神の未熟さ。
子どもなんだから仕方ないっちゃあし仕方ないが、フュージョンしてゴテンクスになった時のあの高ピーな態度は危険だ。
自信が諸刃の剣となって、かえってそこにつけ込まれる。

悟空の神様に初めて会った時の修行法もそれだったが、最初の修行は「瞑想」だった。
何時間でも心を無にして集中する。

繰り返していけば精神力UPは間違いないのだが、そんな地味な修行法は二人には不満なのである。

何時間も座っているだけなんて、たいくつ!

「あ〜あ、俺たちはさ、もっと技を増やしたりって、実践的なことやりたいんだよな」
「うん!だって僕たち充分強いんだもん!」
ってな感じである。


2.ピッコロさんの性格
神との融合を果たして多少温和になったといわれるピッコロであったが、依然として厳しく、ぶっきらぼうで愛想なんかはひとつもない。
少しでも口答えをすれば怒鳴るか、冷たく突き放す言い方をし、子どもたちには嫌いではないが少々煙たい存在に感じられる。

 

というわけで、少しずつ不満が高まってとうとう「いきたくない」という結論に達したのであった。

 

二人は悩んでいた。

「どうしよう、なんて理由つける?トランクスくん」

「う〜ん、病気…じゃうそ臭いし、二人同時でもおかしいよな。
用事ができたってことにすれば…!だけど修行より大切な用事が見つからないな〜」

もうすぐ9時。神の宮殿へ行かなくてはならない時間になる。

あまり時間もないし、いい考えも浮かばなかったので、結局無断欠席にすることにした。
怒られるかと思ったが、どうしても行きたくなかったのだ。

「忘れちゃった、ってことにすればいいよね」

「うん!もし迎えにこられると厄介だから、気を消して遊びに行こうぜ!」

少々後ろめたさが残ったが、悟天の家の裏山(パオズ山)で釣りをしたり、虫取りをしたり、
怪獣さんと遊んだりして二人は1日中楽しく遊んでしまったのであった。


さて、次の週。またしても二人は悩んでいた。
ピッコロが先週迎えに来ることはなかったが、きっと怒っているだろう。
忘れてしまったということにしても、「なんで後で連絡しなかったんだ」と言われれば、言い訳できない。

……
結局、怒られるのが嫌でその日も休んでしまった二人だった。


悟飯は来週のテストで忙しく、軽く「修行どうだった?」ときかれたが、無難なことを言うと納得してくれた。
なぜか、ピッコロも来ない。
とりあえずは、バレてないことに安堵するトランクスと悟天だった―――――。


子どもたちが修行をサボり始めてから3週目の昼。
悟飯は神の宮殿へと向かっていた。
今日で中間テストが終わったのだ。
久しぶりに親愛なる師匠と会いたかったし、二人の修行の様子を見に行きたかったから。
人のよさそうな顔を解放感にほころばせながら、いっそうの速さで飛んでいった先には、目的の半分しかいなかった。

「悟飯さん、お久しぶりです。」

「悟飯か」

「こんにちは、デンデ、ポポさん。
テストが終わったので、悟天とトランクスの様子を見にきたんだ。
ピッコロさんもお元気そうで。二人はどこにいるんですか?」

「?」

突然引きつった顔になった、ピッコロとデンデに不思議そうにする悟飯。
そんな彼にポポは、いつもの表情のまま説明した。

「子どもたち、来てない。もう三週目になる」

「なんだって!?」

顔色が変わった悟飯の様子を見て、面倒なことになったとピッコロは嘆息した。
二人が来ないのならば仕方がない。
平和になったんだ、たまにサボることくらいはあるだろう。
迎えに行くのも面倒だし、そのうちまたやってくるだろうと思っていたのだが。

「ピッコロさん、すみません。
そんなことになっているなんて全然気がつきませんでした。」

「勉強で忙しかったのであろう?気にするな。お前のせいじゃない」

「いえ!お忙しいところに無理言って修行をお願いしたのに…。
僕の責任です。
今すぐ二人のところへ行って話を聞いてきます。待っていてください!」

「あまり、気にするなよ」

――なんでこの俺がフォローしなきゃならんのだ、まったく、トランクスと悟天のやつめ!


内心で舌打ちしながら、怒りに燃えている悟飯の様子をみることにしたピッコロである。

 


宮殿を飛び出した悟飯だったが、途中で止まり目を閉じて二人の気を探る
。気を抑えているため分かりにくいが、弟と弟同然の存在の気なのでじき見つけることができた。

あまり遠くない場所!

今度こそ、ものすごいスピードで飛び立っていく。

 

さてその頃、サボり魔たちは北の岩場にいた。
なんとなく遊ぶ気にもなれないで、大きな岩に寝そべりながら空を見ている。

遊ぶ気にもなれないのは、修行に行かなくちゃいけないのに行きたくなく、
サボったり嘘をついてる罪悪感や叱られるかもしれないという憂鬱のため…。
気分が低下しているからだった。

「ねえ、トランクスくん。やっぱりさあ、謝りに行こうよ。」

「だってさあ!…謝って素直に許してくれる相手かよ!すっご〜く怒られるぜ、俺たち!」

「ぅ…そーなんだよねえ」

さっきから何度も繰り返される会話…だが一向に実行に移されない。

不毛だ…と不機嫌なトランクス。
やっぱりサボろうなんてしなければよかった…と困っている悟天。

そこに、おなじみの気が急速に近づいてくる。

「やばい!悟飯さんだぜ!」

「ええ!?兄ちゃん?どうしよう?」

「隠れなきゃ!」

うろたえてとりあえず隠れた二人であったが、その真上に停まった悟飯が怒りの混じった大きい声で

「悟天!トランクス!出て来い!!
二人ともそこにいるのは分かっている!!!」

といったので、断念して出てきた。
いつも優しくて大好きな兄ちゃんが怒っていると思うだけで、足は竦んでしまうのだが・・・。

「「あははは…」」

乾いた笑いをしながら出てきた二人は、ぎろりと睨まれ小さくなる。

「なんで兄ちゃんが来たか分かるか、悟天。分かるよな、トランクス!」

「「……はい。」」

「今ピッコロさんに会ってきた。
3週間も修行を休んでいるそうだな。何でだ?
どうして、今まで黙ってたのかも、理由があるなら話してごらん」

自分が冷ややかな声が出しているのが分かって、悟飯は内心で驚く。
こんな風に怒ることは初めてだ。
サボりたい気持ちは、なんとなくではあるが分かる。
だが理由があるなら、どんな理由でもいい、自分にだけは話して欲しかった。
そしたらもっとなにか対処できたのではないかと思う。

それに悟天は2週目の時修行について聞いたとき、嘘をついた。
それは許したくない!
だって、僕は兄ちゃんなのに、嘘をつく必要なんかないのに……!


悟飯の気がどんどん上がり、ゆらめいているのが分かった二人は観念してぽつりぽつりと気持ちを話した。


「…すみません…」

「ごめんなさい、兄ちゃん」

目をつぶって話を聞いていた悟飯は腕組みをといて、片膝をつき子どもたちの目線に合わせる。

「二人とも反省はしてるのか?」

「「はい」」

「じゃあ、悟天。こっちにこい」

「?」

近づいた悟天をそのまま引き寄せて、片膝に乗せる。
そのまま帯を解きズボンを下げた。
丸々とした子どもらしいお尻が現れて、それを見たトランクスはショックのあまり固まった。

―――悟飯さん?悟天?どーすんの?まさか…!やばいよ〜☆★☆

悟天は突然のことで、わあわあ騒いでいたが。


――――バシィッ!!

「うわあん」

手のひらが打ち下ろされて、柔らかい肌に当たり弾ける。

膝がお腹に来ているぶん頭が下がり、結果お尻がより突き出るので叩くにはちょうど良い。
逃げることができないのでダメージも大きかった。

あまりの痛さに、悟天は悲鳴を上げる。

「兄ちゃん、やだ、やだよお〜」

「悟天。サボってピッコロさんに迷惑をかけたことと、兄ちゃんに嘘をついたことについてお仕置きだ!」

バシィ!

バシン!

バシッ!

バシッ!

ビシッ!

連続して数回叩くとお尻は赤味を帯びてきて、悟天はすでに大泣きである。

バシィッ!

「うわあああああん、痛いよー!」

ビシィッ!

「あああああ〜ん、ごめんなさ〜い」

「もうしないか?」

バシ!

「うえええええ〜、しないよお」

「ピッコロさんにごめんなさいしてくるな?」

バシン!

「ご、ごめんなさい…する…!」

その後も十数発叩かれ、さらに泣き声が岩場に響く。

 

――――ピシャアン!!!

最後に強く叩かれ許されると、悟天はその場でへたりこんでお尻をさすりながら泣きじゃくった。

「痛いよお」


しかし彼だけで終わるはずもなく、「トランクス!お前も来い!」の言葉で彼の親友までお仕置きを受けることが確定した。

トランクスは、といえば固まりながら真っ青になっている。

痛いのも嫌だし、憧れている悟飯にお尻を叩かれるのも嫌だし、とにかくとにかく嫌だ!!
嫌なもんは嫌だ!!!

来いといわれても体が動かない。それにプライドもある。

ブルマとベジータの血をひいているだけあって、プライドも高いトランクスはそういう時には素直に動けなかった。

「しょうがないな」

ため息をついて悟飯は近づくと、軽々と体を持ち上げ横抱きにする。
片手でズボンに手をかけると一気に引き摺り下ろした。

「は、はずかしいよ、悟飯さん…」

弱々しく抗議の声を上げるが聞き耳を持ってくれない。


「トランクス、いけないことだってわかっているだろう、何故素直になれない!?」

バシ!

バシッ!

バシン!!

一言ずつ言われるたびに、叩かれる。

「あ・・・い!」

「ごめんなさい」と言う言葉がのどまで出掛かるのに、・・・声が出ない。
悟天のように、素直に言えたらいいのに…
でもなんとなく、うまく言葉にできないのだ。

じたばたともがき、力ずくでも逃れようとする。
並の人間なら彼の行動を止めることは不可能だが、あいにくと捕まえている相手は並ではなかった。

フュージョンしている時ならともかく、通常では悟飯の戦闘力のほうが高いので逃れることはできない。
加えて、横抱きにされ不安定な体勢でもある。

バシッ!

バシッ!

痛みも容赦なく加えられ、トランクスはパニックに陥った。

「うわあああああああああ!!」


―――・・・悟天はあーゆー性格だから謝れるけど、トランクスは謝れないんだな・・・。

叩きながら徐々に怒りも治まってきた悟飯は気付いたが、やめる気はなかった。
悟天と同じくらいきっちり叩いてから、もう一度聞く。

「いけないことをした時は?何て言う?」

「・・・・・・・・・」

「ごめんなさいは!?」


少し強めに叩く。

「痛!」

「言わないと終わらないぞ?トランクス!!」

パァン!!
パン!

「・・・・・・ごめんなさ・・・」

パァン!!

「…よし!よく言えたな」

 

悟天もトランクスもしばらくの間、うずくまって泣いていた。

お尻もひりひりと痛いし、悟飯に怒られたこともショックだったし・・・。
でも少しだけ、もう嘘はつかなくていいんだということにほっとした。

「ほら、二人とも、そんなに泣くなよ」

悟飯が優しい声で慰めると、やっと泣き止んだ。

「兄ちゃん、もう怒ってない?」

「ああ、もうお仕置きは終わったからな」

「悟飯さん・・・俺たちのこと嫌いになった?」

「嫌いになんかならないさ。
好きだから、大切だから悪いことなんかして欲しくないんだよ。」

おずおずと聞いてきた質問に笑顔で答えると、二人は心底嬉しそうな顔をして抱きついてくる。

そのまま受け止めてくしゃくしゃと頭をなでた悟飯は、ふと真顔になり

「これからピッコロさんのところに行こう」

「ええええ・・・やっぱり?」

「怒られるぅ〜」

「サボってピッコロさんにも迷惑かけただろ?自業自得だ。
・・・兄ちゃんも一緒に謝ってやるから」

とゆーわけで、三人は神殿へ向かった。

 


「こんのバカモノ―――――――!!!!」

と青筋立てて雷か魔貫光殺砲でも落ちるかというほど怒られると思われたが、意外なことにピッコロは怒らなかった。

「そうか。嫌ならもう来なくていいぞ」

つと横を向いてしまう。


―――悟飯、お前・・・(汗)

先ほど神殿から下界を見てたときに、お仕置きシーンをばっちり見てしまったピッコロはかつての弟子の厳しさに内心で驚いているだけだったのだが。

「!!」

「え、やだ!嫌じゃないよ!!」

「そうだよ、修行するよ!!教えてよ!!」

そっけなさすぎてピッコロに見捨てられたかと思った二人は必死になった。

「ごめんなさい、もうさぼらないからぁ・・・」

涙ぐみそうになった二人に、フッとため息をついてピッコロは今度こそ怒鳴った。

「じゃあ、サボった分たっぷりと修行をしてもらう!!まずは瞑想!始めろ!!!!」

「「はい!!」」

「…そしたら今日は組み手でもやるか」

ぼそっとつぶやいた言葉に悟天とトランクスはもとより、悟飯もそこにいたデンデも顔を輝かす。


「今日はボクも修行に参加させてもらってもいいですか?」

「・・・好きにしろ」

「え!?兄ちゃんが?やった!」

「わ〜い、組み手俺と最初にやってよ悟飯さん!」

「早くしろ!!!」

わいわいと騒ぎながら悟天もトランクスも、今では修行が楽しいものだと感じていた。
さっき怒られたことも忘れてるところが、子どもなのだが。


神殿では暗くなるまで、張り切って修行が行われたようである。


 
はやと
2004年04月26日(月)

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